疑心暗鬼!焦燥!妄想が止まらない… 福本伸行、最新作「闇麻のマミヤ」が与える衝撃

疑心暗鬼!焦燥!

妄想が止まらない…

福本伸行、最新作

[闇麻のマミヤ]が与える衝撃

令和元年5月1日 文・花崎圭司

 

「福本伸行最新作」

 

その文字を見て、すべて合点がいった。

ほんの30分で、俺の世界が変わった。

その世界が変わる30分前――

ああくそ!

なにもかもが腐ってやがる!

政治も! 経済も! 警察も! 世の中の何もかも!

……そんな大きなことをいってるわけじゃない。

44年生きてきたが、自分が接してきた【世界】。

その【世界】がどれだけ俺を痛めてつけてくるのか! 腐ってやがる!

そして!

それに戦うことをあきらめてしまった俺!

俺が一番腐ってる!

推していたアイドルも辞め、年号も「令和」になった。

お金もなけりゃ仕事もない。彼女もいなけりゃ友達もいない。

東京にいる意味なんてあるんだろうか?

26年の東京生活。俺になにが残ったのだろうか?

手に入れた物より、失った物の方が圧倒的に多すぎる。

――もういいんじゃないか。

そういう内なる声が聞こえてくる。

唯一のオアシスが本屋だった。

しかしベストセラーを見ると本屋に行っても相変わらず成功者の話ばかり。華やかな世界ばかり。

その実、彼らはなにも「本音」を話していない。

「本音」をいっているつもりかもしれないが、都合の悪いところは書いていない。

明治大正昭和前期の文学と、過去の哲学があれば十分だ。それを読み切る前にどうせ俺の人生なんて終わる。

好きなところに住んで、バイトして、古本屋で買った志賀直哉の「暗夜行路」を読み、静かに暮らせばいい。

風に任せて。

嗚呼、瀬戸内を見ながら1日を過ごす。

……でも俺はその行動を起こせるのか?

彼なら出来るだろう。

アカギなら……。

ああ! こんな夢想! 夢物語ばかり考えているから、俺は性根まで腐ってるんだ!

部屋でひとり、こんなことばかり考えて1日が終わる。

世間は動いているのに、俺は動いていかない。

時が過ぎ、時が自分を朽ち果てさせる。

カーテンは閉めきり、外の光はまったく入ってこない。今が何時か、晴れているのか雨が降っているのかも分からない。

陰鬱になっていく。いつものルーティーンだ。

ピンポーン。

チャイムが鳴る。

なにかの勧誘だろうか? インターホンの受話器を取る。

「はい」

「○×運輸ですが」

……○×運輸? 聞いたことがないな。

そう思いながらドアを開ける。

ギョッとする。黒いスーツの男が立っていた。サングラスを掛けているので表情がうかがい知れない。

借金取りか? でも俺は借金はしていない。親との約束で唯一守っていることだ。

「ここにサインを」

なんだかサインするのが怖いが、反射的にサインする。

「ありがとうございます」

そう言った後、黒服の男の口角が上がったように見えた。

封筒のラベルには俺の名前は書いてあるが、送り主が書いていない。

ヤバいやつか?

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