しかし…誰がここからの逆襲を予想しただろうか。
潮目が変わったのは1月24日だった。
この日連勝したドリブンズは、週明けの1月27日も連勝し、4連勝となった。
そこからは持ち前の安定した戦いぶりを見せ、少しずつ負債を返していったのだ。
あの4連勝からちょうど1ヶ月が経つ。
開幕からずっと低迷し、誰もが通過を諦めたチームが、この日のたろうのトップを受けてボーダーがくっきりと見える位置にきたのだ!
2戦目。
東1局1本場に3000・6000をツモった村上は、もうそれだけで…
感極まって泣きそうになっていた。
これまで散々ひどい目にあってきたけど、ギリギリ…本当にギリギリのところでボーダーラインが見えてきた。運の要素の強いゲームとはいえ、俺達は麻雀で勝つことでしか存在感を示せない。まだこの場所にいたい。応援してくれる人たちのためにも、そして自分自身のためにも、絶対にセミファイナルに進みたい。
いろんな思いが村上の中を巡っているのだろう。ドリブンズをずっと追い続けてきた私も、自然と涙が溢れてしまった。
南1局。
上家の親・黒沢のリーチを受けてこの手牌。ドラが4枚あるとはいえ、もう終盤だ。
は中筋、は現物、ドラのは通っていない。
村上は考え…
を切った。ドラが浮いているイーシャンテンでは、否定はできないカンですら切るに値しない…という判断だろう。これは至って普通だと思う。
だから直後に打たれたも鳴かなかった。
さすがにドラは切れないか。一応村上はトップ目なので、親リーチに押すのはかなり負荷が高い。
そこへひょっこりをツモってきた。いやーさすがにドラは切らないだろう。ここで切るくらいなら直前のをポンしている。
ん…考えているぞ。まさか、この終盤でトップ目が親リーチに…いくのか?
40秒の時間を使い、村上は…
いったぁ!脅威のドラ切り!
おそらく…だが、黒沢のリーチが「ツモ切りリーチ」だったことが大きいのではないだろうか。あの黒沢だ。ドラにかかる待ちなら即リーチに踏み切っているかもしれない。
あと、これだけドラが見えていると「高すぎる故のダマテン」というケースもなさそうだ。
とはいえ、村上とて確信があるわけではない。が当たるケースだっていくらでもある。
親にロン、と言われればそれは「敗着」と言われる選択になってしまうだろう。
チーム状況を考えると、
そんなは、ドリブンズの運命を賭けた、魂の選択だったように思う。
かくして村上は運命を自ら手繰り寄せるかのようにを引き寄せた。
なんと、このとき、黒沢の待ちは
カンだったのだ。
もう村上の闘牌を見ていると、不用意な放銃はしないような絶対的な安心感がある。
しかしドリブンズの未来は良い材料ばかりではない。
この数戦、とくにこの日の2回戦の終盤、ドリブンズに対し、他3チームが過剰なまでの包囲網を敷いて戦っていた。
結果的にドリブンズは40000点台の3着になってしまったのだ。
あと6試合。日数にするとたったの3日だ。このワントップ差が、もしかして、とんでもなく、遠い差になってしまうのかもしれない。そう感じた2回戦だった。
脱落チームが決まるXデーは3/9。それまでにどのようなドラマを見せてくれるのだろうか。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」