熱論Mリーグ【FS最終日】
この熱狂は外へ届いたか⁉︎
牌の気まぐれに歓喜し、
翻弄されたMリーガーたちの
2年目のエピローグ
文・ZERO【火曜担当ライター】2020年6月23日
誰が想像できただろうか。
日本中の麻雀打ちが、モニター越しに見える選手たちの一打一打に、かたずをのんで見守り、アガリに熱狂し、そして放銃に悲嘆している。
麻雀プロのような上級者、覚えたばかりの初心者、視る専門のファン。
その腕に関係なく、多くの人が1つの対局を見守り、そして語らう。
麻雀というゲームが、世の中に認められてきた感触がある。
そしてMリーグというコンテンツが、今の元気のない日本を救うのではないか…そんな大袈裟なことすら感じさせる。
そのMリーグの最終戦。
麻雀でいうとオーラスもオーラスを迎え、4チームはこのようなポイント状況になっていた。
1位Piratesと2位フェニックスの着順勝負、さらに3位ABEMASまで十分に条件は残っている。
ポイントが半分になるシステムの都合で、こういう競り合いになりやすいとは言え、最後の最後まで結末がわからない戦いになった。
東家 沢崎誠(KADOKAWAサクラナイツ)
西家 魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
北家 小林剛(U-NEXT Pirates)
東1局
「ロン、3900」
開局から、衝撃が走る。
なんてことない3900だが、よく見ると上家の沢崎に切られたアガリ牌を見逃している。
(東1局から見逃し?)
今季のMリーグで縦横無尽の活躍をして、この最終戦も任されたエース魚谷が一瞬驚いた表情をする。
しかしすぐに「はい」と返事し、点棒を払った。
自分に言い聞かせているように見える。
これくらいで驚いてはいけない。
この半荘はそういう戦いなのだ、と。
今季の王者を決める、最後の戦いなのだ…と!
一方で、飄々とした表情の多井。
トップは最低条件で、Piratesとフェニックスにいくらかの点差が必要なABEMAS。
魚谷か小林から出てもアガり、ツモでも当然ツモっただろう。
しかし沢崎からだけはアガらない、と決めていたに違いない。
条件戦に無類の強さがある…と定評があり、ABEMASの最終戦に登板してきたスーパースター。
もう周りが「多井は条件戦が得意」と思っている時点で、彼の術中にはまっていると言える。
この3900の見逃しを見て、下家に座る魚谷や対面の小林は、以降「見逃し入っているかも」という疑心暗鬼の中、戦わないといけない。
そういう意味でも3900という点数以上の価値がある見逃しだった。
東2局
「1300・2600」
とすぐに魚谷がツモり返す。
「一回戦で戦った誠一さんがどんな結果で終わろうとも、私が絶対取り返す。セガサミーフェニックスは優勝します」
珍しく強い口調で、こう語ったという魚谷。
魚谷は昨シーズン、チームに借りがあるとずっと感じていたのだろう。
なかなか結果が出ず、そんなときに支えてくれたのが近藤誠一だったのである。
それはポイントだけでなく、精神的な面も大きい。
「ゆーみん、大丈夫だよ」