安目ながらフリテンを引き戻しての待ち。
見合っているよね?
自分で確認するように間を置いてから魚谷は
落ち着いたリーチの発声とともにを横に曲げ、追っかけリーチを宣言した。
数々のタイトルを獲った後、Mリーグでも昨シーズンにMVPに輝いた魚谷。
どんな状況でも慌てず、対局に集中し、自分の麻雀を貫き通す。
そんな魚谷はもう「女帝」の風格さえ漂っている。
魚谷はこうやって「女流最強」などと女性を特別視することを嫌うが、どうしても丸山との鮮やかな対比を感じてしまう。
プロ入り2年めでMリーガーになり、急成長を見せる丸山。
その丸山の攻撃を真正面から受け止め、反撃する魚谷。
女帝に立ち向かう新人。卓上での火花が美しい。
この局は萩原からが打たれて、横移動で決着した。
「萩原の執念」か。
「女帝対新人」か。
今日はどっちかの構図を描こうかな。
観戦記者である私はそう思っていた。
しかし、1人の男が一撃で全てを持っていった。
魔王降臨
その一撃がいかに凄かったのかを解説していく。
東4局8本場
流局続きで8本まで積み上がった東4局、親番の寿人の配牌は
ダブが暗刻と上々。
順調に手が進んだ寿人は、ここでテンパイ。↓
…その前に上家の捨て牌を見てもらいたい。が切られている。このは3枚目であり、オマケにも1枚切られている。
形だけ見たら打点が落ちるのでスルーするのもわかる。
しかしもう一度状況を整理する。
・8本場で供託が1本落ちている→アガるだけで3400点のボーナス付き
・はもうほとんどない
・11巡目
おそらくほとんどの打ち手が渋々といった感じでチーテンをとるのではないか。
なるほどこのツモは寿人しかたどり着けないテンパイ形かもな…そう思っていたら
「リーチ」
耳を疑った。
暗刻のダブ東を惜しげもなく横に曲げたのだ。
決めていたのだろう。ノータイムだった。
ボールがきたから打つ。
スポーツ選手が本能で体を動かすように、寿人の動きに1寸の迷いも感じない。
くどいようだが、もう一度状況を確認すると
・11巡目
・供託わんさか
・ダマでも親マン確定
・愚形
と、ダマにする要素はいくらでも挙げられる。
「そんなんじゃ終わらせねぇよ!」
紫電一閃!
一発ツモからのウラウラ!
8000は8800オール!
全部合わせて27400点の収入!
「これがあるからKONAMIファンはやめられねーぜ!」
ファンの歓声が聞こえてくるようだ。
あとは焼け野原だった。
この焼け野原は、寿人にしか見ることができない風景だ。