小林の待ちはへと変化。
手からを出して揺さぶっていく。
しかし内川が絶好のを引き、ネックのを切って待ちのリーチをかけた。ついに襲いかかることができた。を引けると見て索子を残したのが功を奏した。
内川のリーチを見てテンパイのたろうも手を止めた。通っていないを掴む。
もしここで内川に放銃してしまうと、トップから一気に奈落の底に突き落とされかねない。これはチーム戦なのだ。1試合目で同チームの園田が散った。それを取り返すために出場しているのである。
攻めっ気の強いたろうが退いた。トップを持ち帰るためにここは守り抜く方針を採る。
そして内川のリーチに対してさらに究極の選択を迎えた者がいた。前局で痛い放銃を喫した亜樹である。
なんだこりゃ。あれよあれよとツモが効いて567の三色が見える理想形が完成したのである。ああリーチさえなければ。とはいえ、これは手が勝手にを切ってしまいそうだ。いくら無筋とはいえ。
「これはいきますね。だってもうだっ…とんでもねえ勝負手だもんこれ」(多井プロ)
「とんでもねえ勝負手ですよこれ」(実況の小林未沙さん)
亜樹はおそらくチームにプラスを持ち帰ってくるのが役割だったはずだ。1試合目の滝沢のトップを、自身のラスによって無駄にしてしまったら意味がなくなってしまう。
チームが1日を通してプラスであればいい。そのためにはたとえ自身の手が勝負手であっても、放銃は避けなければならない。
を切って勝負手と別れを告げた。トップを守り続けねばならない風林火山ならではの一打といえよう。この舞台がMリーグであることを思い起こさせた。感動と同時にこのチームを崩すのは容易ではないと感じた。
東1局で元気よくカンチャン追っかけリーチをしていたあのころから長い年月が経ったかのようである。
結局、内川のリーチは不発に終わった。流局という結果に終わったが、筆者がいちばん印象に残った局であった。
南4局。
拮抗した勝負になっている。トップに立つたろうが4巡目で手を止めた。親で手がかなり悪い。これはもう、あれでしょといった雰囲気で多井プロが解説する。
「タイプが違いますね。私だったらもう全部真ん中切って……」
「おおーーー」(多井プロ&小林さん)
オオカミの遠吠えのような甲高い声が上がった。これはもう守備を意識した一打。この手はもう攻められないと判断したのだ。
確かに内川が、、という切り出しでやる気がありそうに見える。
亜樹がダブを河に放ち
小林もドラのを切る。そう、全員がやる気満々だったのだ。
これを見て、たろうは字牌を抱え込んで危ない牌を次々に放り投げていく。多井プロの「配牌オリ」が有名だが、たろうもその技を途中から使った。先ほどの亜樹と同じく、絶対にこのリードを守らなくてはならない。そう感じさせるではないか。
亜樹にテンパイが入る。リーヅモ一盃口赤で逆転だ。直前にが切られてしまったがリーチをかける。
たろうにとって恐れていた事態がやってきた。こうなったときのために字牌を用意してきたので放銃リスクは少ないが、ツモられて逆転の可能性も十分にある。
この手から
現物のを切って完全撤退。もし跳満でも放銃すればラスになってしまう。それはトータル90ポイント近く損することになる。を頼りに変に粘らず、あっさりと退いたのは格好よかった。
そして当然、黙って亜樹の動きを見ているわけにはいかないふたりがいる。
虎視眈々と七対子のイーシャンテンで構えていたのは小林。こういった細かい点数勝負は滅法強い。亜樹がリーチ棒を出したことで条件がどうなるかを素早く計算していたに違いない。
苦しかったのは内川だ。
厳しい手格好。急所の牌をいくつも引かないといけない。勝負は実質、亜樹と小林の争いに。
小林にテンパイが入った。実は亜樹の待ち牌であるを2枚持っており、自身が手放さない限り負けがない状態だったのだ。たろうにとっても大きい。ツモアガりでまくられることはない。
を切って勝負に出た。小林に負けはほとんどない。テンパイが取れずに3着落ちの可能性があった中で、見事つないでみせた。