一滴の水も漏らさない! 超攻撃派の鈴木たろうが決断した鉄壁のオーラス手順【Mリーグ2020観戦記12/21】担当記者:山﨑和也

小林の選択は打

ここまで内川何切る、たろう何切る予想を立て続けに外していた多井プロが、本気で驚いたシーンである。「ええっ!?」と声が裏返った。多井プロはを切ると断言していた。を残しておけばドラのを引いた際にペン待ちで一気通貫も見られる。(先にを引いた場合は個人的に打で両面リーチなんですがどうでしょう)

多井プロが戸惑いを隠せない中、次巡すぐにを重ねてテンパイ。を切ってのシャンポン待ちリーチをかけた。の周辺がくっつきやすいと判断した小林の選択が成功。高打点を追い求めず自身の読みを信じて放ったリーチ赤。小林らしいと感じた。

しかしなかなかツモれない。実は山にはの1枚しかなかったのだ。河に索子が並んできて嫌なムードも立ち込める。

ラス目で親の内川もリーチを受けてからを鳴いて懸命に迫っていた。

と怒涛の押し。まるでオーラスであるかのような迫力があった。

もう何枚通したんだという感じになってきたが、ついに流局が見えてきた。テンパイで終われれば内川の努力が十分実を結んだといえる。

しかし深い位置に眠っていたを引いて小林が内川の連荘を阻止。価値ある1000―2000で内川を置いていきトップ争いに参戦した。

内川も渋い表情を浮かべていた。このままでは終わらないのが今月絶好調の内川だ。

東4局では2000―4000のアガりを決めた。そう簡単には終わらせないのが頼もしい。このアガりから場がさらに緊迫した雰囲気に包まれる。

南1局。トップは亜樹の30700点。

誰が抜け出すかという中でたろうの配牌がゼウスだった。ドラのを対子で持っているイーシャンテンである。

初手は打のほうがいらないように見えるが、の両面待ちのリーチを狙っている。いきなりを切ったことでその周辺は持っていないと周りに匂わせているのだ。好配牌でも抜かりない。

しかし親の亜樹も手応え十分だっただろう。かなりまとまった手で、いかにも4000オールが目に浮かぶ。

安全牌のもキープして守りもよし。

すると、たろうに両面のターツが埋まった。

のシャンポン待ちでリーチ。実はこれ、先ほどの小林のシャンポン待ちと違ってめちゃくちゃアガりやすかったのだ。

その理由は。たろうにとってオタ風のはまず切られてしまう牌である。並みの両面待ちよりも強い。

安全牌として後生大事に抱えているトップ目がいるではないか。たろうのターゲットは亜樹。リーチを受けて一発目で亜樹は現物のを切った。若干たろうの捨て牌が濃かったので字牌を警戒していたのかもしれない。

実は内川のところにもがあってまさに発射台だったのだが、1枚切れのを切ってしのいだ。ともに戦いたい手でありながらさっと切らない辺りさすがであった。これがチームを託されたドラフト1位の姿だ。

次巡で亜樹がをツモってを放銃。こればかりは他に選択肢がなかったので仕方がない。もし手が悪かったらも止めていただろうと予想する。

たろうがリーチドラ2で5200点を亜樹から直撃。もし一発がついていたら8000点だった。亜樹がスレスレで2着に踏みとどまる。

南2局。一局の終了が見えてくると、何気ない一打にも気を遣う。

亜樹の手はこちら。メンタンピンの手になりそうだが、よく見るとアガるまでは時間がかかる。テンパイまでに真ん中の牌を何枚か切る必要がある感じだ。

として目一杯にしたのだが、ややためらった様子であった。ドラもない手なので、もしリーチがかかってしまうと厳しい情勢だ。盾を捨てて獣と追いかけっこするようなものである。その距離感を見極めていたのだろう。

牙を研いでいたのは内川。もうひとアガりで追いつく。上図のところで手を止めた。ターツ払いの選択を迎えており、間違えられない場面である。

内川はを切った。のところを嫌ったのである。これは索子がいいと見た判断で、たろうの河にが2枚切れていて、亜樹にもが早めに切られている。小林もと切った。つまりが山にある可能性が高いのだ。筆者なら枚数の少なさで索子を嫌ってしまっていただろう。

なるほどなるほどと筆者がメモをしていると、小林がテンパイを入れていた。の暗刻を武器にカン待ち。を両面で鳴いて、をポンと小林らしい軽快さだ。いざとなればでオリれるのが心強い。いつだったかの放送で実況の日吉辰哉プロが「字牌の暗刻は将棋の『馬』の守りに匹敵する」と言っていた(手術頑張ってください)。

たろうも「チャンタクロース」(多井プロ)で追いかける。

を両面でチーし、打チャンタ三色の手にまとめた。そういえばクリスマスが近いですね。

小林はを引いてと入れ替え。たろうのチャンタを警戒して繊細だ。このは部分的にはかなり強く、3人の目にはテンパイに見える一打。局面が煮詰まる。

内川がを引いて手の内に残した。

周りはいかにも危ない。一歩後退である。

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