一滴の水も漏らさない!
超攻撃派の
鈴木たろうが決断した
鉄壁のオーラス手順
文・山﨑和也【月曜担当ライター】2020年12月21日
Mリーグの魅力はなんといってもチーム戦であることだと思う。お隣の将棋界でも今年初めて『AbemaTVトーナメント』という団体戦が開催されたのだが、それはそれはとんでもない盛り上がりを見せていた。チーム戦ならではの戦い方を見るのも楽しみの一つである。
今回の2戦目の顔触れはこちら。
南家 小林剛(U-NEXTパイレーツ)
西家 内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
EX風林火山からは個人好調を維持している亜樹。パイレーツからは今シーズン未だ4着になったことがない唯一の存在小林。サクラナイツからは12月中全Mリーガーの中で最も勝っている内川。と好調者が3人揃った。チームが下降状態に入ってしまったドリブンズからはたろうが登場。前回はフェニックス茅森の交通事故のような清一色に放銃してしまいラスになってしまったので、メラメラと燃えているに違いない。
本局を持って全チームが前半戦90試合終了となる。
東1局。
親の亜樹はまとまったイーシャンテン。
を引けば345の三色になる。
機先を制したのは内川だった。ドラと赤を持ちつつスリムに打ち進めながらのテンパイ。
を切れば場に1枚見えのカン待ち。
内川は迷わずに即リーチ。やを引けば平和になるが、すでに打点が十分なので手替わりを待つメリットは薄い。それよりも早くリーチをかけて周りの出足を止めていくのが大きそうだ。
山には2枚残っており、ツモアガりも十分狙える好判断の一着だった。
とはいえ親の亜樹もドラと赤を抱えていて簡単には引き下がりたくないところ。
どういう形で追いつくのか注目しているとを引いてカン待ちのテンパイとなった。ほとんど時間を使わずに追っかけリーチ。亜樹は守備力の高い打ち手であるので、こういった追っかけリーチをする際には高打点であることが濃厚。男3人は震えていたに違いない。
こちらも山に2枚残っていた。互いに2枚残りのカンチャン待ち対決となる。
亜樹がを暗槓して破壊力アップ。
内川としても少しが出やすくなったので悪くない。
最終盤に決着がついた。「あっ!」と大声を張り上げたのは解説の多井隆晴プロ(声掠れ気味)。内川が掴んでしまったのだ。
裏が1枚乗って12000のアガりを決めた。まずは序盤の勝負どころを亜樹が制す。
東2局。
東1局の結果を見て、カンチャンでも何でもかんでもリーチが強いなあとぼんやりと思っていたら、たろうにカン待ちのテンパイが入った。場の状況としては親の小林がダブをポンしており、亜樹が小林に対応しつつも前に出ている。
ここはダマにした。たろうの捨て牌にとが切られており、いまで待っているとは周りに悟られにくい。
を引いた。ドラのを切れば両面待ちに変わる。
これを見てリーチをかけた。が自分で3枚使っており、が待ちごろと判断しただろうか。周りの手の中にがある場合、ポツンと浮いている事が多い。
こんな感じに。内川もテンパイすればを切ってリーチとしていたかもしれない。ちなみにたろうのカン待ちの際に内川のが危なかったのだが、不用意に打たずに手の中に残していたのも好調ぶりがうかがえた。
たろうの親リーチを受けて守備力が落ちていた小林だったが、危なげなくテンパイにたどり着いた。待ちのはたろうに通っている。小林の勝ちも予感させたが
たろうがをツモった。カンチャンではなく両面待ちにしていなければアガれなかった牌である。大きな2000―4000で亜樹の背中を追う。たろうの判断が見事だった。
東3局。ここまで静かに船を走らせていた船長小林が動く。
上図のいわゆるくっつきのイーシャンテン。ここで何を切るだろうか。