なぜ?どうして?
自ら激流へ身を投じた、
魚谷侑未強気の
選択3シーンを考察
文・東川亮【木曜担当ライター】2020年10月29日
大和証券Mリーグが開幕して4週目の後半。
8チームがそれぞれ2試合を戦う2日間を「節」とすると、この日は全45節中の8節目にあたる。
まだまだ序盤も序盤だが、ここまで各チームが7節14試合を戦ってきた中で、少し気になる点があった。
昨シーズンのMVP、魚谷侑未(セガサミーフェニックス)が出ないのだ。
前節までの出場数は、丸山奏子(赤坂ドリブンズ)と並んで最も少ない2試合。
もちろん他の試合との兼ね合いもあっただろうし、セガサミーフェニックスはさまざまなデータを元に起用を決めるという話もあるが、そうだとしてもエースをここまで使わないことに、少々違和感を覚えていた。
その魚谷が、この日の第2試合に登場。
実際には10/20以来の出場と10日も空いていないのだが、なんだかだいぶ久しぶりにユニフォーム姿を見たように思える。
第2回戦
東家:魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
西家:沢崎誠(KADOKAWAサクラナイツ)
この日の魚谷は、印象的な選択をしたシーンがいくつかあった。
それらのシーンについて考えてみたい。
■シーン1:ドラスジではなくドラそのものをプッシュ
魚谷が黒沢から3900をアガって迎えた、東1局1本場。
この局は亜樹が6巡目にリーチを打つ。
待ち牌のは沢崎がトイツで持っているが、2枚は山だ。
リーチを受けた魚谷はと打っていき、9巡目でこの形。
形で言えばを打ちたいところではあるが、無スジな上にドラである。
亜樹が2巡目にを切っていることから、まずは「安い方!」ということでドラスジを打って様子見、手が進めば勝負のビジョンもあるように見えるが・・・
少考し、魚谷はを打ち抜いた。
この時点でリャンメン3つ残りのリャンシャンテン、かなり強引な押しのように思えた。
「2シャンテンから無スジのドラを打った」ということだけ考えると、かなり無謀なように見える。
では、なぜそんな選択をしたのだろうか。
まず、亜樹のリーチに対しては、沢崎と黒沢は現物やスジを打ち、やや対応気味に見える。
そして魚谷は安全牌がなく半ば押し出されたような形といえ、真っすぐ手を進めている。
そしてアガリまでを見たとき、この時点でが3枚見え、が2枚見えと、を使ったアガリはやや厳しいように思える。
ここで孤立のを打っておけば次のがほぼ安全牌で確保できる上、展開によっては暗槓で打点を引き上げ、リーチをぶつけて行くようなルートもあるだろう。
いずれにしても、この手を形だけで見たとき、最も不要なのがだ。
次に、亜樹は第一ツモからリーチまで、やは手出ししていながらやはなんの迷いもなくツモ切っていた。
亜樹捨て牌
(はツモ切り)
ドラが1枚なら間違いなく残すだろうし、トイツや暗刻であっても残したい牌だ。
そうしたことから、亜樹の手にピンズの上はない、あるいはすでにメンツが構成済みで、は通ると読んだのかもしれない。
実は亜樹は1巡目でイーシャンテンという非常に早い手であり、は亜樹がテンパイ時に引いた牌だったのだが。
その後、魚谷は守備に回らされるも、亜樹のアガリ牌を2枚とも抑え込んでテンパイを取りきった。
打ちの場面でを打っていたら、おそらく打を続けてしまい、このテンパイは取れなかっただろう。
そうしてつないだ東1局2本場の親番では、リーチ平和ツモ赤裏の4000は4200オールをツモ。
一気に4万点台まで点数を増やし、大きなリードを作ることに成功した。
■シーン2:親リーチにワンチャンスを頼らず無スジ押し
魚谷トップ目で迎えた東4局。
この局で先手を取ったのは親の黒沢だった。
リーチ平和ドラドラの大物手、待ちのは山に7枚とじゅうぶん過ぎる枚数があり、ツモるのは時間の問題と思われた。