2023年10月2日(月)の第1試合、東1局に東家の赤坂ドリブンズ・渡辺太がいきなりのツモアガリ。
ドラのカンをツモってのホンイツ、親満だ。
これは想像だが──、この開局を特にこの選手は、「面白くないな──」と思って見ていたのではないだろうか。
BEAST Japanext・鈴木大介は、1974年生まれで、75年生の私と歳が近い。
おそらく麻雀に関わってきた時代背景も似たようなもので、現代からすれば古い考えや打ち方に触れていた経緯もあると思う。
勝手な想像だが、なんとなく意図が伝わってくるのだ。
東1局の1本場、南家の大介は6巡目にここからを北家からポンした。
大介は1メンツをとりあえず完成させ、親の渡辺のツモ牌は西家に飛んでいくことになる。
どこかで大介が語っていた覚えがあるのだが、こういう“好調な親のツモ番を飛ばす鳴き”をおそらく意図して行っている。
また、自身の手が6巡目で1メンツもなく、間に合っていないと感じたときに無理にでも鳴く、という話も聞いたことがある。
言葉尻だけ捉えるとどことなく昭和感のある発想だ。
しかし、実際に東家も下家に動かれることは自由を奪われるし、中盤にツモ番が飛ばされて一歩他家にリードされることは十分ある。
渡辺はこのときこんな手牌で──
西家にすぐペンとイーペーコーのできるが飛んでいった。
恐るべき昭和。
もちろん小林剛あたりに言わせれば、食い流れた牌を追うのはナンセンスな感情なのだろう。
それはそうだ。牌の並びはランダムなのだから。
ただ──、刹那的には、面白い。
本人の狙いはどうあれ、このポンはなかなかできない。
私も競技麻雀を長くやってきて、昭和のこうした感覚と麻雀というゲーム自体の本質について、
両方の考えが混在する時代を過ごしている。
おそらく、在野の強豪というのは今も昔も、こんなタイプなのではないだろうか。
この局はそれから西家が待ちでリーチ。
すぐ北家が一発目に切った現物のを、また大介がポン。
ここからノーチャンスの打だ。
これはなんだろう?
テンパイに向かうなら場に2枚切れのを切ればよく、
はまだ使える牌だ。
おそらく、元々の構想が、
「親のツモ番を飛ばし」「打牌に制限をかけること」
を目的としているために、自身が直線的にアガリに向かうわけではなく、
ここでも自分の手が進んでいること、テンパイかもしれないと警戒させることを主軸に置いているのだろう。
また西家の一発も消え、(これは自分の鳴きでテンパらせてしまったからという意識もあるのかもしれないが)
ドラの浮いた格好ではあるがソーズの1メンツは確定できている。
このポンはもっとできない。
が、手は進むし安全牌もあるし、悪くはない。
──面白い。
そして終盤、大介はさらにこの形になってなんとドラ単騎のハネマンテンパイ。
最後のツモ番でを引く。
4枚見えの牌が多く、西家にリャンメンで残っているのはとだけ。
ここで大介はを抜いてやっとオリた。
これはどうか。
「大介さんには負けたくない」
と将棋界からの黒船に対する強い対抗心を口にしていた白鳥翔あたりなら、
牌理上ほとんど当たらないドラのを切ってテンパイ料までせしめていたかもしれない。
これはマイナス1000点確定かプラス1500点確定で、差し引き2500点の加点の見込める打牌なのだ。
ここも、当初よりの大介の構想が反映している気がする。
勝負の局と、捉えていたわけではなく、
あくまでも牽制しつつ、渡辺の親を落とす──それが達成できればよかったのだろう。