赤切りが発動した時、変化系のキングが特質系のエンペラーになる 【Mリーグ2021観戦記10/29】担当記者:越野智紀

赤切りが発動した時、

変化系のキングが

特質系のエンペラーになる

文・越野智紀【金曜担当ライター】2021年10月29日

Mリーグ2021(10/29第1試合)

石橋選手の特徴と言えば代表的なもので、赤牌切りがあると思います。

赤牌切り戦略のリスクはアガリ点の低下や、その牌を鳴いた人のアガリ点が上昇することなど。

リターンはアガリ率の上昇や、頻繁にやることで普通に赤牌を切った時にも関係ない周囲の牌を警戒させることが出来るなどあります。

「どんな手なら赤牌を切ってくるんだろ?」

それを考えながら観るのが石橋選手が出場した試合の楽しみ方の一つで、今なら切るんじゃないかって場面に遭遇するとドキドキします。

Mリーグ3年連続でフーロ率が3位以内と多彩な仕掛けも特徴的で、かなり変則的な打ち手の印象が強い石橋選手ですが

「石橋さんは鳴かなければ怖い、強いと思います」

その逆の印象を持つ選手もいます。

対戦相手を評価する言葉なんて、どこまでが本心かは分かりません。

古典落語の饅頭怖いのように、ホントは好きな饅頭を苦手なフリして相手からせしめてしまうパターンも存在します。

ただ今回の『メンゼン怖い』を発したのが魚谷選手とあれば話は別。

強くなることに素直な魚谷選手は単純一途の強化系雀士で、狡賢い狙いは一切なさそうです。

そんな警戒をされていた石橋選手のメンゼン手が、この試合の序盤から飛び出しました。


余剰牌の選択で【1ピン】を残すと

南家魚谷選手が重なる前に【南】を処理することに成功。


これでメンゼンテンパイした石橋選手。

このどこにでもありふれた役無しドラ1のリーチが、カンドラモロ乗りのハネ満のアガリです。

【1ピン】【南】の切り順の良さが望外の結果につながりました。

この一撃の貯金を持って迎えた南1局の親番で


日向選手からのリーチに対し、【中】を仕掛けていきます。

愚形中心のイーシャンテンで正直アガリは簡単ではない手です。

一発で【8ソウ】を押している魚谷選手も非常に気になりますが、魚谷選手もノーテンから二人相手に無筋を押し続けるのは困難なはず。

日向選手のリーチと自身の仕掛けで魚谷選手の高いイーシャンテンぐらいの手を降ろせれば悪くない取引ということでしょうか。

Mリーグの一人辺りの平均アガリ率はおよそ20%で、残りのアガれない80%の局をどう凌ぐかで大きく差が出てきます。

心穏やかな人は【中】を鳴かずに安全牌としたほうが安定しそうですが、こういう綱渡りのような仕掛けから得の欠片を集めるプレイは石橋選手の得意とするところです。

しかし石橋選手のメンゼンを警戒していた魚谷選手は、その仕掛けでは止まらず。

昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらない平穏な状態で真っ直ぐに手を進めていき

一発で高目をツモって倍満のアガリ。

続く南2局。

2番手に下がった石橋選手は日向選手の親リーチをに対して無筋を押すも

テンパイ出来ないまま終盤へと進み、ロン牌の【8ピン】を掴んで受けを選択。

安全にテンパイを目指す方向へと進路を変更しました。


ここから石橋選手得意の仕掛けを絡めた粘りを見せ

最後のツモ番で重なった二つの【8ピン】

この華麗なアガリでメンゼンだけじゃないことを魚谷選手に対して見せつけた石橋選手。

後手を踏んでも真っ直ぐに手を進めて、ロン牌では迂回。

そこから粘ってテンパイを目指し、上手くいけばアガリまで拾う。

そんなメンゼン良し・鳴いても良しの絶対時間を高い精度で出すことが出来れば、他を圧倒する成績になることは間違いないです。

これまで赤牌切り跨ぎリャンメン待ちなどの変則プレイで蒔いてきた黒い種も発芽して、今期は一気に回収の年になるのではと僕は睨んでいます。

過去3年間のMリーグレギュラーシーズンでのマイナスを取り返し、キングがエンペラーになる日は近そうです。

なお、この試合は南3局の親番で再逆転した魚谷選手が最後もアガリ切って1着。

石橋選手は2着に終わりました。

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