第29期發王戦観戦記 ~輝いた4人の選択、そして真の發(龍)となった男・仲林圭~ (執筆・成田裕和)

 

しかしここから大事なのは長谷川とのポイント差だ。現状白鳥がラスに沈んだので、長谷川とは2着順差。さらに素点を増やしていく必要がある。

 

そしてー運命の南2局がやってくる。

 

8巡目、親番でこの手牌。ドラがアンコになり、勝負手となった仲林は、ここで【3ピン】を切り飛ばす。ピンズが場に高く、同じピンズでもより好形を狙って【8ピン】【9ピン】を落とす選択肢もあったが、張がピンズのホンイツ模様、親であることや巡目的な兼ね合いもあったか、シンプルにターツを残し、3pをリリースした。

 

するとここで長谷川のリーチが入る。

待ちは【3ピン】【6ピン】のリーチのみ。そう、仲林は前巡に【3ピン】を処理していたおかげで、放銃を回避したのだ。

長谷川はこのリーチ判断について「ドラの【5ソウ】が入る、待ちがソーズの3面張、なら迷わずリーチ打てたんだけど、めちゃくちゃ悩んだね。これをリーチしない手もあったけど、仲林さんがマンガンツモると一旦ポイントが逆転されちゃうから、ここは条件を突きつけるために勝負にいった。何より、前巡に仲林さんが【3ピン】を処理していたのはさすがだなって思った」とコメント。

これまで局面に応じた押し引きをしながら、積極的にアガリに向かい、自分の手で扉をこじ開けてきた長谷川。「自分で決めに行くー」強気の選択は最後まで貫かれていた。

 

そしてついに仲林が絶好の【8ピン】を引き入れ、【6マン】【9マン】待ちで追いかけリーチ!

どちらが勝つのか。卓上に幾万もの熱視線が注がれる。

この1牌の後先が生んだ結末の確認に、そう時間はかからなかった。

 

これまで耐えしのんできた仲林が、ついにライバルの長谷川から直撃をもぎ取った!

リーチ一発タンヤオドラ3。あまりにも大きすぎる18000点のアガリで、今度は長谷川をもラスに沈めた。

そして南4局オーラス。卓上で【5ソウ】が跳ねた。500‐1000。仲林の大逆転優勝が決まった瞬間だった。

 

王者として連覇に挑み惜しくも敗退となったが、技術の高さを見せつけてくれた白鳥。

 

 

最高位戦Classicに続く前人未到の2冠達成とはならなかったが、局面に応じた強気の選択で観る者を魅了してくれた長谷川。

 

 

大胆かつ焦らない選択を魅せ続けてくれた、最高で最強の招待選手・張。

 

 

そして、マイナスを最小限に抑える安定感のある麻雀が活き、なかでも勝負所のオーラスで着実に順位を上げていたのが印象的だった、優勝を決めた仲林。

 

この4人の選択は、要所で光り輝き、観る者を思う存分楽しませてくれたことだろう。

 

麻雀はひとつ突出している武器がある選手も見ていておもしろいし、そうした強者もたくさんいる。今回優勝した仲林のことを解説の河野は「教科書のような基本に忠実な麻雀だが、その中に強さがある」と評価しているように、総合力が高いことが最大の特徴だ。

 

アガリの部分がフォーカスされがちだが、勝利条件を満たすための見逃し、赤ナシならではの手牌の構想力、手牌の悪いときの立ち回り、オリ手順など、仲林がマイナスを抑えた部分もぜひ見てみてはいかがだろうか。

 

こうして技術・メンタルの両輪ががっちり嚙み合い、逆転優勝を決めた仲林。

戦前、こんなツイートをしていた。

 

盟友・吉田光太(最高位戦)から「お前は俺の龍を継げる」という言葉から生まれた仲林のキャッチフレーズ、「龍を継ぐ者」。

 

いまや仲林は「龍を継ぐ者」ではない。仲林自身が龍(發)となったのだー。

 

【最終結果】

優勝 仲林圭(+40.7pt)

準優勝 張敏賢(+9.6pt)

3位 長谷川来輝(▲18.4pt)

4位 白鳥翔(▲31.9pt)

※龍について気になった方は、ぜひ最高位戦インタビュー記事『FACES』吉田光太選手の記事をご覧ください。記事はコチラ

(対局画像引用元:株式会社スリーアローズコミュニケーションズ)

文・成田裕和(最高位戦日本プロ麻雀協会)

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