第29期發王戦観戦記 ~輝いた4人の選択、そして真の發(龍)となった男・仲林圭~ (執筆・成田裕和)

 

そしてオーラスでは、

白鳥が2着で終わろうとするタンヤオ仕掛けに呼応し、親のリーチが来る前に颯爽と【4ピン】をアシスト。自分の手牌だけみれば文句なしのメンホン1シャンテン、トータルラス目でさらなる加点のチャンスだが、ここをトップでこの半荘を終えることが次の戦いを有利に進められることは、張自身が誰よりも知っている。最高位・最強位の2冠をかつて獲得している男は、このビハインド状況のオーラスでも決して焦らない。

 

麻雀は一人でやるものではない、特に条件戦は味方を見つけるゲームだー。

それを我々にしっかり牌で示してくれる。こんなに心地よい牌の会話はない。

トータルラス目の張がトップを獲得し、またもやポイント差は均衡状態に。

 

1着:張(+42.8)2着:白鳥(+11.0)3着:長谷川(▲15.9)4着:仲林(▲37.9)

 

3回戦を終わってポイント状況は以下のようになっていた。

王者・白鳥が一歩抜け出す展開だが、下3名もマイナスを小さく抑えていることから、まだあと2戦で逆転が十分可能な位置につけている。野球に例えるなら守備力の光る投手戦が続いている感じだ。4者無駄な放銃が少なく、高い守備力を保ちながら鋭い球(アガリ)を放ってくる。

 

4回戦

起家から長谷川-白鳥-仲林-張

張が一歩抜け出す中、迎えた東3局。

長谷川はドラ1を内蔵したタンピン系の勝負手。ここで愚形のカン【7ピン】をほぐす打【8ピン】とする。

しかし、同巡で仲林は【8ピン】待ちのチートイツでテンパイしていた。

ここはアガって親連荘かー。

だが仲林はスルー!

親番とはいえトータルラス目かつ巡目が早いことから、ドラ引きやもっとツモれそうな待ちに変えて、高打点のアガリを目指しにいったのだろう。この大舞台で見逃せる胆力と、仲林の強い意志が感じられる。

1牌の後先は、なぜこうもおもしろくさせてくれるのだろうか。長谷川も親・仲林の現物である【6ピン】を手に残しつつ、すぐさま【3ソウ】を引いてリーチ。この【8ピン】【6ピン】の切り順が逆になっているだけで、仲林はさすがに「リーチ宣言牌だから渋々アガるか…」となり、このリーチは生まれていなかったに違いない。

 

仲林もすぐさまドラの【8ソウ】を引き入れ、これならばリーチと踏み切るも…

 

なんと長谷川が高めの【6ソウ】を1発ツモ!このハネマンで仲林は親かぶりとなり、手痛い支出となった。

あそこでアガっておけば…と誰もが一時は思うだろう。これが実際に敗因となるかもしれない。次局以降に引きずってしまう打ち手もいるかもしれない。

仲林も一瞬首をもたげて悔しそうな表情をにじませたが、すぐさま次やるべきことを探しているように見えた。「まだ試合は終わっていない。これからやるべきことをやっていこうー。」

仲林の強い意志と勝利への執念、長谷川の丁寧な手順が見られた見ごたえのある1局だった。

しかしその仲林の気持ちとは裏腹に、勢いづく長谷川がアガリダンスを披露していく。

リーチ一発ツモピンフタンヤオの2000‐4000。

続く親番ではカン【5ピン】待ちドラ1の手牌でリーチといき、ツモって裏1の4000オールに仕上げる。「誰も俺を止められない!」と言わんばかりのキレッキレの動きだ。

瞬く間に数十分で

こうもポイント状況が変わってしまった。現状のポイント・点数状況で、トータルトップ目は長谷川、張が後を追う展開に。

1人の選択が全員の運命を変える。これが麻雀の魅力であり、恐ろしいところである。

激闘の4回戦、オーラスは仲林が1着順アップのタンヤオ・ドラ3を長谷川からアガり、長谷川暴風雨の中、命からがらプラスポイントを持ち帰った。

あのアガリ逃しでメンタルが揺れ、その後の打牌に影響することがあってもおかしくなかった。技術に目が向けられがちな仲林だが、ここでしっかりと2着を獲得するのは、紛れもなくメンタル強者である。

最終戦前のトータルポイント状況は以下のようになった。

長谷川が一気にトータル首位に躍り出た。白鳥・張もまだまだ優勝条件が残っているが、一番きついのはトータルラス目の仲林。

最高位戦ルールはウマが10-30でオカなしのルール。つまり1着順差で20pt差がつくのだ。

仲林は白鳥・張をまくりつつ、トータル首位の長谷川とトップラスを決めて27.4pt差、もしくは2着順差をつけて47.4pt差をつける必要がある。

 

最終戦

起家から張-仲林-白鳥-長谷川

運命の最終戦が始まった。ここまでトップなし、あまり手牌に恵まれず、後手に回ることが多い中、マイナスを最小限に抑え、戦える位置でくらいついてきた仲林。

 

勝利条件を満たすため着順にもこだわり、東1局ではタンヤオチートイツでテンパイするものの、トップ目の長谷川の一人ノーテンを狙ってアガリ牌を見逃しするなど、自分の優勝にむけひたむきに前をむいてきた。

 

最終戦の東2局・親番でも、白鳥・長谷川の両リーチを受け窮地に立つ。

 

落とすわけにはいかない親権を維持するには、ここから放銃せず、アガリ切るもしくはテンパイを取りきらねばならない。

仲林は諦めない。白鳥のリーチに対し、【4マン】【2マン】の切順で比較的通りやすい【3マン】、端牌の【1ピン】をプッシュ。長谷川のリーチが入るも、道中でドラを引き入れ雀頭とし、ついにメンピンドラドラで追いついた!

手に汗握るこのめくり合い。劇アツの3件リーチを制したのは…

仲林だ!

戦える手牌まで育て上げ、後方から一気に攻めたて、針の孔を通す値千金のアガリを決めた。白鳥から12000の直撃に成功し、まずは現王者をラスに沈める。

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