コロナ禍の中止を経て1年越しに開催された『第29期發王戦』。今回は在来のチャンネルだけでなくABEMAで生放送されるなど、注目度の高さが伺える。それほど屈指の好カードとなった今回の決勝。予選から準決勝まで過酷なトーナメントが行われ、それを勝ち抜いた屈強な4名が、大塚『スリアロスタジオβ』の1卓に集結した。
(写真左から)
張敏賢(招待・元最高位戦日本プロ麻雀協会) 白鳥翔(現發王位・日本プロ麻雀連盟) 仲林圭(日本プロ麻雀協会) 長谷川来輝(最高位戦日本プロ麻雀協会)
1回戦
起家から仲林-張-白鳥-長谷川
東1局、6巡目に待ちのピンフのみのテンパイを取った白鳥がヤミテンを続行し、仲林から1000点の出アガリ。ドラ引きでの打点上昇もあるが、親である仲林の現物待ちであることも加味して、クレバーにヤミテンで打ち取る。
続く東2局では他家が押し返す中、リーチピンフツモの700‐1300を軽やかにアガる。
開局序盤から、相手の親を軽く落として見せた現發王位・白鳥。打点の低いアガリながらも、冷静に親番を蹴っていく。この細かいアガリからも、王者の風格が漂っている。
「待ちたまえ白鳥君、君の親番はやらせんよ。」と言わんばかりに、東3局では最高で最強の招待選手・張が長谷川からリーチ・チートイツの3200を出アガリ。
「ついに他団体のタイトル戦初決勝だ。發は俺が継ぐ!」続く1本場では仲林が長谷川の親リーチと白鳥のマンズのホンイツ仕掛けを交わすツモ・チートイツの800‐1600。
途中までメンツ手進行だったが、相手の攻撃に対して形を崩さず、丁寧に牌を選んでいった結果のアガリ。この粘りとバランスの良さが仲林の真骨頂だ。
まるで相手を探りあうようにジャブをお見舞いしあうこの1回戦。ジリジリとした展開の中、肩を徐々に温めていく選手たち。来る後半の勝負所に向けて、観る我々の胸も高鳴っていく。
「こちとら北海道と最高位戦の看板を背負って戦ってんだ。卓上で踊るのは俺一人で十分だ!」と叫びを上げるのは、ここまで北海道予選から計10回のトーナメントを突破し破竹の勢いで決勝へ進出した『トーナメントの鬼』長谷川だ。
点数が均衡する南2局、ドラなしのこの手格好から2枚目の發をポン、を打ち出す。
あとひとつ役牌が重なるとホンイツが見え鳴いて打点をつけやすい形でもあり、タンヤオ牌を引いてくるとタンピン系も狙える。現時点では『打点の見えそうで見えない手牌』だ。
長谷川はこの手を、親を蹴って相手のアガリを潰すために最速でアガる方針に定めた。
しかしその後カンドラがとなり一気に勝負手に。待ちとなる単騎選択をズバリ引き当て、發・ドラ3のツモアガリで1着へ浮上した。
2巡前のとの単騎選択で、カンが入っていることや、は仕掛けている仲林に対して安全に通ることから待ちを選択。このアガリが決め手となり、1回戦は長谷川がトップを獲得。まず一つ大舞台で踊って見せた。
1着:長谷川(+45.1)2着:仲林(+10.5)3着:白鳥(▲10.0)4着:張(▲45.6)
2回戦
起家から白鳥-張-仲林-長谷川
この半荘は白鳥の試合巧者ぶりがきらりと光った。
東3局5巡目、ドラ1の456三色テンパイ。リーチする打ち手も多そうだが、白鳥はここでヤミテンを選択。
そもそも愚形のカン待ちでリーチをかけるとアガリ辛いことや、今この瞬間ならノーマークで他家が切ってくれそうで出アガリしやすいこと・5200点と十分な打点もあることも決断の要因としてあるだろう。結果この手を自らツモり上げ、トップ目に立つ。
そして南2局では、この手牌から上家の長谷川が切ったをカンチャンでチー。打とした。
シャンテン数の変わらない鳴きであるが、これには理由があった。
現状、仲林が・をポンしており、なにやら不穏な仕掛けだ。高いケースはマンズ染めだが、序盤の字牌は枚数が切れているので手牌で使えないため切った可能性が高く、残っている字牌はとのみ。しかしまだマンズも余っておらず、速度的にはまだテンパイしていることは少ないだろうという判断か。
メンゼンでも十分高くなりそうな手だが、現在南2局でこの点数状況。局回しに徹することで、自分のトップを獲得できる確率を最大限高めに行った。
もう一度盤面を見てみよう。そもそも2巡前のをチーして待ちのテンパイを取れる形なのだが、これをスルーしている。マンズの染め手がいる/かつ場況が悪く、ではアガリにくい待ちになることがチーしなかった一番の理由だろう。
そこでこのカンチーの選択肢が出てくる。仲林がテンパイしていないと読むなら、今ならを落としつつ、場況が良くアガリやすいピンズ・ソーズ待ちにシフトチェンジすることができるのだ。相手の手牌進行具合の推測、アガリへの嗅覚がないと、なかなかとっさに反応できない鳴きである。
結果長谷川から打ち出されたで見事局消化に成功。着順を左右する「南場の立ち回り」は勝利を手にするための必須事項だが、全試合通して見ても、白鳥がトップに立ってからの局回しには安定感がある。こうして王者・白鳥が少しも隙を見せないまま、終盤に突入する。
この半荘オーラスは、仲林が4巡目に待ちのチートイツ・ドラ2をテンパイ。一旦ヤミテンに構えて、へ待ち変えてリーチといった。
とどちらも場況は良かったが、自身の落とし、のスジのということで、少しでも他家から直撃がとれる待ちにしたか。
長谷川も捨て牌から匂う変則手を察知し一時当たり牌を収納したものの、中盤で手詰まり仲林に放銃。今試合でなかなか手牌に恵まれない仲林だったが、こうしたワンチャンスをものにする力がずば抜けて高いからこそ、マイナスを減らしつつ戦える位置にいることができている。
初戦トップだった長谷川がラス、仲林はマイナスをなんとか抑える3着へ浮上した。
1着:白鳥(+47.7)2着:張(+12.1)3着:仲林(▲17.8)4着:長谷川(▲42.0)
3回戦
目起家から白鳥-仲林-張-長谷川
タンヤオが確定していて、待ちも絶好の3面張。悩まずリーチといきそうな牌姿だが、なんと張はヤミテンを選択。トップ目かつ供託2本が落ちているとはいえ、トータルラス目でこの選択をできるのは、大舞台での経験を積んできたからこそなのか。
自分からは4枚見えで、3面張とはいえリャンメン待ちと同じ枚数であることや、仲林や長谷川が・を切っており、比較的拾えそうだと判断したのだろう。ビハインドとはいえ、まだまだ余裕すら感じさせる。結果この手をツモり上げ、トップのまま局を進行させていく。