「最も尊敬する麻雀プロは?」
と聞かれたら、
私は「小林剛」と答える。
【Mリーグ2021-22 回顧録】
文・ゆうせー【担当ライター】2022年5月5日
「麻雀サイボーグ」小林剛。
小林は所作が丁寧なだけでなく、常に視聴者の「見やすさ」を大事にしている。
例えば、
右端のをツモってきた場面。牌の上下が逆になっているが、小林は、
牌を回転させて切ることで、「最小限の動作」で牌の上下を入れ替えて河に並べている。
ビデオや切り抜き動画で見返していただきたいのだが、いつ小林の河を見ても、視聴者が見やすいようにきっちりと牌の上下が揃えられている。これをスマートにやってのけるのが小林流。
他にも、
牌を鳴いた際には、視聴者が確認しやすいように少しの間、副露牌を手牌のそばに置いている。観戦記を書く者としてもありがたいが、目視出来る時間が長くなることで、「何を鳴いたか」というのが意識に残りやすくもなるだろう。
小林は、
解説や説明でも、常に見る側に立って「分かりやすさ」を大切にする。
普段考えているであろう計算で出した数字、難解な語句、これらを出来るだけ少なくしている。
例えば、
「ここでを鳴かなかったのは、鳴いてもあまりアガりやすくなっていない、という判断でしょうね」
といったように、なるべく多くの方に届くような言葉遣いを心がけている。各方面へのフォローも入れつつ進行するなど、見る側が気持ち良く視聴出来るように、という配慮が窺える。
「多くの方に届く」と言えば、ツイッターの使い方も素晴らしい。
予想の斜め上から飛んでくるような、面白いツイートが多い。
そして、
こちらはセミファイナルでチームメイトが3ラスを食らったときのツイート。
小林が天鳳名人戦で4連ラスを食らったときにつぶやいた顔文字、
(゜ー゜)
通称4ラスくんの右側が欠けている。
チームが負けていると凹んでしまいそうなものだが、スッとネタを入れることでチームの空気を明るく変える、実に小林らしいツイートである。
そう、小林はその場の空気に合ったコメントが得意な選手だ。
スポンサーである日清食品の協賛で行われた、第一回麺麺位決定戦で優勝した小林は、インタビューで、
「カップヌードルは持ちやすくて麻雀にぴったり」
と語った。「持ちやすい」という視点が素晴らしいが、これを思いつくのは小林のコメント力の高さに他ならない。
小林のコメント力は、レギュラーシーズン最終日にも発揮されている。
MVP争いに注目が集まったこの日、
「Mリーグはチーム成績が一番大事なので、なんかMVP狙ってる人いるなぁ、頑張っているチームがいるなぁと思っていたんですが…」
「最終戦は誰かが叩き潰しますよ」
と、場を盛り上げる発言をしていた。小林にしてはアツいセリフだなと思っていたのだが、
「昨日誰がいくか、延々と数式を立てて考えていたのを台無しにされたので… え? 予告?? みたいな」
なるほど。
Pirates側からすると、確率的に「不利な直対」を「させられる」ムードに変えられてしまったこともあるだろうか。
思うところもあるし、言いたいことは言うけれど、誰を傷つけることもない、いいコメントだ。
なんにせよ、「予告先発作戦やったもん勝ち」にはさせない小林の反撃コメントは、Piratesクルーのモヤモヤをスッキリ晴らし、同時にMリーグ全体でのMVP争いを一層盛り上げていたように思う。
そう、小林の何より素晴らしいところは「多方面への配慮」だ。
セミファイナル最終戦。
次シーズンの選手入れ替えについて尋ねられた小林は、こう答えた。
「プロの世界、勝てないチームがずっと続くのはおかしいので、こういった決めはあるべきだ」
自分がずっと引っ張ってきた優勝経験チームが、たった今敗れた瞬間に、こんなコメントを出来る選手がいるだろうか。