リーチ超人・村上淳が
最後に示した矜持と意志
2023年6月29日L卓 文・東川亮
Mトーナメント2023、12卓48名で行われた予選1stステージは、こちらのL卓が最後の戦いとなった。
1位通過は石立岳大(いしだて たけひろ)、日本プロ麻雀連盟の招待選手。
初戦ではオーラスでリーチ棒付きの満貫出アガリという条件をクリアして見事に逆転トップを獲得、2戦目では手痛い放銃を喫しつつも最後までアグレッシブな姿勢を貫いて勝ち上がりを決めた。
2位通過は二階堂瑠美。
初戦は相手のロン牌を掴みまくる厳しい展開となり、5度の放銃でマイナスのラス。2戦目も東場が終わるまでは苦戦が続いたものの、南1局の親番でカンドラモロ乗りのハネ満を仲林から直撃、次局にも石立から満貫をアガって5万点オーバーの大きなトップとなり、初戦のビハインドから巻き返して次のステージへと駒を進めた。
村上淳は3位で敗退。
2022-23シーズン限りで赤坂ドリブンズとの選手契約満了が発表されており、これがドリブンズの所属選手としては最後の対局となってしまった。だが、敗戦のなかでも村上らしさが存分に発揮されていたことを、本記事ではお伝えしていきたい。
対局のクライマックスは、ぜひABEMAプレミアムでご確認ください。
第1試合の東2局。村上の手にピンズの3メンチャンの形ができ、ターツ選択を迫られた場面。村上は自身でを切っているにもかかわらずフリテンの受けターツを残した。
ABEMAプレミアム限定の天井カメラからの視点。
は2枚見えていてイーペーコーにはなりにくく、石立・瑠美の2人が早い巡目で1sを切っていることから、は比較的良さげに見えるところだ。だが、そう読んだとしてもフリテンターツを残すのには勇気がいる。
これがうまくいき、一度切ったを引き戻してのリーチ。残念ながらアガリには結びつかず流局となったが、村上の山読み、そして読みに殉じる気持ちが見えた一局になった。
2戦目の南1局2本場。
前局には親の瑠美が仲林からハネ満を直撃し、自身は2番手に後退している。これ以上親の瑠美にアガらせたくない状況で、5巡目にテンパイ。
ドラを切れば待ちの変則3メンチャンにとれるが、は直前にポンされていて、見た目よりも待ちは薄い。ドラを使いたいならカン待ちでリーチの手もある。
村上の選択はテンパイ取らずの打、とのくっつきに構えた。
焦ってリーチをすれば相手に制限をかけられるかもしれないが、自身の手も縛ってしまう。ただやみくもにリーチをかけるのではなく、よりアガりやすさ、アガったときの打点を求めるのがリーチ超人のスタイル。
この我慢が実り、タンヤオ変化からの待ちピンフリーチにたどり着く。
実はこの直前、瑠美が村上の切ったドラをポンしてテンパイをしていたのだが、シャンポン待ちに受けていれば村上のを捉えてハネ満をアガっていた。
結果的に瑠美の決定打を免れた格好であり、こういうときはえてしてアガリに結びつくようなイメージがあるのが麻雀だが、
テンパイを入れていた石立が瑠美に満貫を放銃。
石立としては、初戦ラスの瑠美がトップだったほうが仲林・村上にリードを脅かされるパターンが少なくなる。そうした状況を考えて、あえて最終手出しでテンパイなら待ちの読みスジに入るを切ったのだという。
勝ち上がりのためにはどうしても瑠美をまくりたい。しかし村上はそれでも、リーチを焦らない。9巡目のカン待ちテンパイはドラが1枚あり、人によってはリーチの選択になってもおかしくないだろうが、それでも村上は自身が納得できるテンパイ形を求める。
ただ、村上の狙いとツモがどうにもうまくかみ合わない。
最終的なリーチ判断となったカン待ちは、これ以上良い変化も期待できず、巡目的にももう待てないが故の、苦渋の決断。
それでもアガれればいいのだが、この局も結局は仲林から石立への満貫横移動。リーチが実らない。
南3局1本場。
現状は石立・瑠美が通過ポジションにいる状況だが、村上はこの試合で瑠美を逆転せずとも、9100点以内に差を詰めて試合を終えられれば次のステージに進出できる。
そこに入った3巡目テンパイ、カン待ち。ドラが1枚あり、うまく満貫ツモを決められれば、トータルスコアが瑠美とほぼ並びの状態でオーラスを迎えられる。
もちろんリーチの選択もあった。しかしここはダマテンで、好形変化や678三色などの変化を見る。
テンパイ外しから、最終形は高目三色の待ちリーチ。このテンパイは、村上の技術と信念がなし得たものだ。高目も、山には十分残っていた。
だが、そこから先は牌山に聞くしかない。即リーチに行っていたら、このでツモだった。
そして結末は石立が仲林からロンアガリ。
1局勝負のオーラス、ハネ満条件を突きつけられた村上は、それを満たすテンパイすらたどり着けず敗れた。