瀬川は、ツモらなかった。裏ドラに望みを託さず、最後まで自力での勝利を目指した。
は、すでに山にはなかった。加藤も大村、そして香川の徹底ケアによってテンパイをさせてもらえず、流局によって対局は決着した。
対局後、ツモらなかったことを同卓者に話す瀬川。もちろん悔しいはずだ。だが、それすらも彼女にとっては麻雀を彩る大切な一部分なのだろう。その思いはきっと、同卓した3名に、そしてこの戦いを見届けた人たちに伝わっている。
勝ち上がり:大村朋宏・香川愛生
みんな、麻雀が好きなんだ
対局後、勝者だけでなく敗れた4名も一様に晴れやかな表情をしていたのが心に残った。麻雀の内容、あるいは所作は、打ち慣れている人にとっては不満だったかもしれない。これまでに行われたトッププロの対局と比べれば、至らないところはあっただろう。
でも、そんなことはどうだっていいのだ。
ベストを尽くしてやり切った、それこそが、麻雀が大好きであるという証明だ。そして勝っても負けても、楽しさを同卓者と共有できる。それこそが麻雀の魅力だと思うし、それに気付かせてくれるのが著名人戦の良さだと思う。
「80歳になったって、100歳になったって、できれば元気で麻雀を愛したい、これからも続けていきたいです」
瀬川さんの最後の言葉は、我々の胸を熱くさせてくれた。きっと、麻雀を愛する誰しもが、同じ思いのはずだ。
熱く面白い戦いを見せてくれた8名の打ち手に、麻雀好きの一人として、心から感謝します。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。