できることは全部やる　追いかけ続ける期待値　これが園田賢を園田賢たらしめる理由【Mリーグ2022-23観戦記11／10】担当記者:後藤哲冶

これを切り飛ばした！

これには多井も思わずこの表情。

「え、園田さんドラ切るの？ 俺チートイツだけど……」
「いやいや多井さん、園田アイは欺けませんよ。当たらないでしょこんな」

内川から出たを捉えて、多井のアガリ。
園田の読みとは裏腹に、リーチチートイ赤１、6400。

「……え？　チートイツなん？　それ」

園田の打ちにはもちろん理がある。

多井のソーズは全て手出し。

しかしチートイツに決め打っている手であれば、の順番が少しおかしい。
はドラ表示牌で１枚出ている上に、ソーズ上は良くはない。
逆にがもう既に２枚見えており、の場況がうっすらと良い。

もしこの時点でシャンテン数が低いチートイツであれば、多井がこの順番を間違えるはずがなく。
はリャンメンの中では強いターツではないこともあり、メンツ手で払ったと考える方が自然なのだ。

となれば当然、のシャンポンにもほとんど当たらない。当たるケースとしてありえそうなのは唯一役牌とのシャンポンだが、それもしか残っていない。

今回は多井がかなり守備寄りのチートイツをしていて、たまたま連続で有効牌を引いたことでこのチートイツテンパイに繋がったが、実際を切った時は３シャンテン。
あのタイミングで既にチートイツのイーシャンテンであれば、場況読みに優れる多井がの切り順を間違えることは無いだろう。

園田は読みで切れる牌を切らずにアガリを逃すことを嫌う。
今回はドラ無しな上、役もないカンチャン待ちだが、それでもリーチに対して危険牌を持ってこないままツモアガリのケースだってある。
その抽選を少しでも受けようとするのが、園田の麻雀。

今回は読みこそ違えたが、この園田の精神がこの半荘の結果を大きく左右することになる。

続く南１局。

カンでチーしている園田。
ホンイツに向かっていたが、ここで方向転換。

北を切ってホンイツを捨ててはいないものの、の縦重なりのテンパイや、を引いてのドラ単騎に備えた。
茅森が自身の仕掛けにと打ってきている事、多井や内川もマンズを被せてきていること。
他家の動向を察知して変える、園田の絶妙なバランス感覚。

しかしここからなかなかテンパイしない園田。

自身の最後の手番でも、テンパイすることができなかった。
これはかなりの「なんなん」案件だが、それでも園田は最善を選ぶことをやめない。
手の中で１番安全な牌はもちろん４枚見えているだが……

あまり時間をかけず、をそのままツモ切る。
下家の内川はかなり形式テンパイの仕掛けに見え、多井も対応しているように見える。
自分がここで安全なを手出しすると、他家からは暗刻からのオリた切り出しに見えてしまっておかしくない。
そうすると、もし仮に最後の１巡でテンパイしている他家がいた場合、園田に切りにくいマンズを切れることになってしまう。

自分の得になる選択をし続ける。
それが期待値を追い続けるということ。

テンパイを入れていた茅森に、。

テンパイかどうかはわからないが、万が一にも、マンズホンイツで園田には打てない。

内川の一人テンパイで流局。
もし園田がを切っていたら、茅森がもしかしたらを切ってきたかもしれない。
500点、園田が得をした。たった500点、されど、大きな500点。

続く南２局。

園田に輝かしい配牌が……！
これを淀みなく育て……