ただ一言「嬉しいです」、と
文・後藤哲冶【金曜担当ライター】2022年12月9日
サクラナイツの小さな天才、堀慎吾はトップを取った際のインタビューで必ず口にする言葉がある。
それは、「嬉しいです」という短い言葉。
ともすれば、ありきたりな感想と思われてもおかしくないようなその言葉にはしかし。
堀が試合に出し尽くした技術が。
針の穴を通すように生まれたアガリがあればこそ。
その言葉にどれだけの想いが、重みがあるのかを、サクラナイツサポーターは知っている。
堀は現在苦しい状況に立たされている。
直近7試合でトップが無く、本日の第一試合でもラス。
今日のポイントをプラスにするために。サポーターに笑顔を届けるために。
堀慎吾が連闘の舞台へと向かった。
12月9日第2試合
東家 佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
南家 小林剛 (U-NEXT Pirates)
西家 松ヶ瀬隆弥(EX風林火山)
北家 堀慎吾 (KADOKAWAサクラナイツ)
歴戦の猛者が出そろった第二試合。
しかしこの強者揃いの卓でも、直近の戦績は意外にも二分されている。
個人としてもチームとしても状況が良い松ヶ瀬と寿人。
逆に個人もチームも状況が芳しくない小林と堀。
苦しい状況の2人が意地を見せるか。
それとも勢いそのままに、好調の2人が押し切るか。
東1局、松ヶ瀬に勝負手が入る。
ペンを引き入れての一気通貫完成は嬉しいテンパイ。
ここはのノベタンに受けてリーチといくかと思われたが。
松ヶ瀬の選択は待ちでリーチ。
1枚切れの字牌は出アガリ率が高い。それに加えてこの単騎にはもう一つ理由があった。
それは小林の仕掛け。
小林は比較的どこからでも仕掛ける打ち手で、攻守のバランスに優れた打ち手だ。
今この瞬間小林にテンパイが入っている確率は低く、同時に、安全牌を1枚確保している可能性が高い。
だとするならば、何を持っているか。
字牌の候補はに絞られ、は前巡松ヶ瀬が切っているので対子の可能性はほぼ無い。
あとはかだが、確率として親の現物である発を1枚持っているケースが多そうだ。
そこまで考え抜いた上での、松ヶ瀬の狙いすました単騎。
このが捕まってしまう。
裏が1枚乗っての8000点は、小林にとって苦しいスタートとなった。
東2局は流局で進み、東3局1本場。
積極的に仕掛けた堀が松ヶ瀬のリーチ宣言牌を捉えて2300のアガリ。
トップの松ヶ瀬に近づくと。
迎えた東4局。
堀に絶好の配牌が入る。
冗談めかして「今日は圧倒的運で勝ちたい」と言っていた堀だが、本当に運を引き寄せたのかもしれない。
この手を順調に育てて……
6巡目にを引き入れてリーチへ。
タンヤオ赤赤は十分すぎる打点だ。
ここにドラ単騎で追い付いた寿人が猛プッシュ。
しかし枚数は圧倒的に堀が勝っていた。