それでも岡田は打ち抜いた。ツモられてもラスは濃厚、一方で自身の手も押し返すには見合う形。リスクを承知で、前に出た。
麻雀牌は既に積まれていて、選手はルール通りにツモってくるだけだ。そこには思いの強さも、意地もプライドも、流れも風も関係ない。応援する人々の思いだって、ツモる牌を変えることはできない。
けれども。
こんなときくらい─
俺たちの、私たちの応援が届いたと勘違いしたって、いいじゃないか。
高く乾いた雷鳴が、対局場に轟いた。
リーチ一発ツモ三色、2000-4000は2100-4100。
そのアガリはあまりにも力強く、あまりにも情念に満ち。
あまりにも、萩原聖人だった。
もちろん、これで終わりではない。萩原が勝つためには、リードしたままあと1局を消化しなければならない。手が悪ければ終わりだ。
与えられた手は、配牌1シャンテン。
次巡、ピンフに変化。何か大きな力が、萩原を勝利へと後押ししているかのようだ。
すぐにテンパイし、最後は自力で決着。
わずか8局、時間にして45分程度と、Mリーグでは極めて短い試合。その結末に待っていたのは、萩原にとって29戦、1年2ヵ月以上ぶりの、Mリーグでのトップだった。
「今まで応援してくれたみんながツモらせてくれたんだなと。やっと実りましたよ皆さん、だから今後もよろしくお願いします」
萩原は、この試合のハイライトとなったカン待ち一発ツモを、幸運ではなく応援のおかげだと語った。もちろん、勝ったのは萩原だ。だが、決して一人だけで勝ったのではない。雷電ユニバースの思いは、確かに萩原に届いていた。これは、雷電に関わるみんなでつかんだ、みんなが待ち望んでいた勝利なのだ。
Mリーガーたちは、応援してくれるファンの夢を、思いを背負って戦う。苦楽を、喜びや悲しみを共にし、分かち合いながら、歩んで行く。
だから、Mリーグは面白い。
だから、雷電の麻雀は、
面白いんです!
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。