ユニバースの思いに
応えるために
萩原聖人、
三色の稲妻で示したRMO
文・東川亮【代打ライター】2022年12月19日
遠い国で宴が終わり、遠い国の英雄が、生涯をかけて追い続けた夢を叶えた。人は夢追い人に自分の思いを託し、熱狂する。夢を追う尊さを、その姿を応援する尊さを、全世界の人が改めて感じた1カ月だったと思う。
夢は、人の数だけある。我々麻雀ファンにとって、大和証券Mリーグは間違いなく夢の一つだ。
そしてMリーガーたちは、応援してくれるファンの夢を、思いを背負って戦う。萩原聖人は、それをMリーグでトップクラスに体現している打ち手だ。胸のエンブレムに手を当て、自身の勝利に対する願いをハートに感じながら、萩原は自身8戦目の卓についた。
第2試合
東家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:萩原聖人(TEAM雷電)
西家:二階堂亜樹(EX風林火山)
北家:園田賢(赤坂ドリブンズ)
東1局。萩原の手は自風がトイツでリャンメンと3メンチャンがある、かなりの好形。
もちろんリーチをかけたい手ではあるが、赤を引き入れてドラ赤の3900ならよし。
岡田の親リーチの宣言牌を捉え、まずは幸先の良いスタートを切った。
だが、自身の親番は岡田のツモであっさりと蹴られ、東3局は園田がダマテンのまま満貫ツモ。すぐにトップをまくられてしまう。
東4局は、岡田が7巡目にタンヤオ赤のテンパイ。このままでも出アガリが可能でツモってもOK、ソーズやマンズ引きで好形変化や打点アップも期待できるため、ここはダマテンに構えた。
続いて萩原もテンパイ。とのシャンポン待ちで、なら出アガリが可能。は親の岡田が1枚切っているが、もう1枚は狙い目とも言える。リーチも考えられたが、萩原もダマテン。
次巡、岡田がを引いて待ちがと良くなったことでリーチ。
直後、萩原が一発でロン牌のをつかむが、ノータイムでを切って回った。この手はしょせん1300点、アガリの価値は低い。それであれば、必要以上にリスクを冒す必要はない。
岡田はツモれず、1人テンパイで流局。
アガリ形をじっと見る萩原。好戦的な打ち手なら、テンパイ時にリーチ、あるいはアガリを拾える可能性を見てダマテンを続行したかもしれないが、それであれば岡田に満貫以上の放銃となっていた。萩原が、目先のアガリや勝利を焦っていないことがうかがえた1局だった。
だが、勝つためにはどこかでアガリを決めなければならない。南3局、萩原の手はかなりまとまっている。そして最初のツモで引いた孤立のは、この手における希望の火種だった。
を引いて1シャンテン、を引けば一気通貫確定のテンパイ。ここは中ぶくれのを切る。
すぐにがかぶってテンパイを逃してしまうが、こんななんて捉えている方がよろしくなさそう。
残していたにがくっつき、マンズ4連形を見切った。こうなると、手役がハッキリと見えてくる。一気通貫か、345三色。後の好形テンパイだけを考えるなら残しの方がよさそうだが、より打点を強く見た、萩原らしい一打である。
もちろん、勝ちたい思いを持っているのは萩原だけではない。現状3番手の岡田にも、逆転トップが狙えそうな手が入っていた。
萩原から打たれたをポンすればテンパイ、アガれば次局の条件は非常に軽くなるが、
岡田は鳴かなかった。次局にいい手が入るかどうかが分からない以上、目の前にある確かな材料は簡単に安売りできない。
先にテンパイしたのは萩原。三色が確定する引きは、本人的にはかなり手応えがあったはずだ。
もちろんリーチ。萩原にとって、ここが勝負局となった。
岡田が一発でドラのをつかむ。
ドラでの一発放銃は、ほぼ間違いなく致命傷になる。岡田の手はしょせん1シャンテン、押すに見合う牌ではないかもしれない。