そしてさらにこう受けることのメリットがある。
ハイテイ手番の東城。
渋川の当たり牌であるを持って来たのだ。
これがの形だと、ツモ切るしかテンパイをキープできない。
渋川に危ないやを引いたときのため、で持っておくと、
ここでテンパイのまま、切る牌を選べるのである。
しかし東城は──
悩んだ末にを放銃してしまった。
確かにここは難しい。
自身が2巡目に切っていて渋川にチーされていないではあるが、場に3枚目になる。
東城の談によれば、渋川がポンしたは2鳴きであり、
4巡目に北家が切ったから鳴いていないところを見ると、仕掛け始めからソーズターツが決まっていた可能性は低い。
もう少し考えれば、切りは選ばなかったかもしれないと。
での頭ハネに──、意識が引っ張られた可能性もある。
確かに渋川のカンチー後、1枚目のが切られた時点での手はこうであり、
これは渋川がバックだけにこだわらず、三色の保険を残してを引っ張ったことによる好手順の結果である。
渋川の手組も、東城の思考も、ここは素晴らしい勝負であった。
東城は、本当に惜しかったと思う。
この後半戦、奇しくも東城と渋川が日を跨いで連戦という形になり、
頭ハネというルールが生んだ複雑な攻防に、競技麻雀ならではの面白さを感じた方もいるのではないだろうか。
早すぎた渋川の幸甚と、
再度脳裏によぎった頭ハネを狙った東城の、あと一歩での放銃。
二人の勝負は、本当に目を見張るものがあった。
さらに激化していくであろう、セミファイナルボーダーを争う極限の知略を巡らす戦い。
東城と渋川の今後の激突が楽しみである。
そんな見るなよ。
日本プロ麻雀協会1期生。雀王戦A1リーグ所属。
麻雀コラムニスト。麻雀漫画原作者。「東大を出たけれど」など著書多数。
東大を出たけれどovertime (1) 電子・書籍ともに好評発売中
Twitter:@Suda_Yoshiki