わずか2局の悪夢── 堀慎吾が選んだ【5s】、 その先に待っていたものは【Mリーグ2022-23観戦記1/23】担当記者:江崎しんのすけ

ただそうなるとドラを1枚も持っていない日向がヤミテンで押してきていることになり不自然だ。打点にも定評がある日向が押してきているとなると、最低1枚はドラを持っている可能性が高い。

このまま手を崩せば3,000点の失点が確定するが、【5ソウ】を通せば失点は0点、しかも仮に当たったとしても3,000点以下の放銃になる可能性も高い。

これまで読みの深さで様々な奇跡を起こしてきた堀。
ボーダー間際のチームにトップを持ち帰るため、考えられる最善の一手を放つ。

「ロン」

放たれた【5ソウ】に、意外なところからロンの声がかかる。

日向だった。

なんと5巡目から一通・ドラ1のカン【5ソウ】テンパイを入れていた日向。
道中【2ソウ】引きのカン【3ソウ】変化や、【8ソウ】を引いての単騎待ちかえなど様々な選択があったものの、カン【5ソウ】を貫き、見事堀から放たれた【5ソウ】を捉える。

ちなみに、滝沢は【中】チャンタ2,000点のカン【2マン】待ち。

松ヶ瀬は【8ピン】をポンして、タンヤオのイーシャンテンだった。ドラは【赤5ピン】が一枚だけ。

トップ目堀から3着日向へ5,200点の放銃で、勝負の行方は全くわからなくなる。

トップから3着までの点差は3,400点。
堀・日向はほぼアガりトップで、滝沢も中打点以上を1回でもアガれればトップは固い。松ヶ瀬も堀の振り込みで跳満ツモ条件となった。

南4局、3人のアガリ競争が展開されるかと思われたが、親番滝沢にスピード違反の手が入る。

なんと2巡目にテンパイ! カン【7マン】待ち。現状4,800点だが…

すぐに【發】がポンできて【3マン】【6マン】待ちの7,700点に。
【4マン】がドラのため、ノベタンの【3マン】【6マン】待ちは良い待ちとは言えないが…

僥倖の【7ピン】を引き入れ【6ピン】【7ピン】【9ピン】待ちに変化!
待ち・打点ともに申し分ないテンパイがわずか5巡で作り上げられる。

そしてこの手に飛び込んだのが

堀だった。
まとまった配牌をもらい、【白】をポンしてアガりに向かっていた堀だったが、滝沢が【6ピン】【7ピン】【9ピン】待ちになった同巡に【6ピン】が浮いたイーシャンテンになっていた。

堀は前局の5,200点と合わせて12,900点、着順がトップ→3着に落ちたため順位ポイントを入れるとわずか2局で実に約73,000点を失ったことになる。

麻雀の不条理が、堀に、サクラナイツに襲い掛かる──

しかしまだ望みはある。
トップ目に立った滝沢とは12,000点差なので、次局に満貫をツモれば再びトップになることができる。

勝負の南4局1本場、堀は逆転の手を入れた。

平和ドラ赤の【5ピン】【8ピン】待ち。リーチをかけトップ奪還を目指す。
同巡、3着目の日向もリーチをかけていた。

【6ピン】【9ピン】待ちのリーチ・平和。ツモって裏が1枚乗れば逆転トップだ。

トップ目の滝沢は既に手を崩していた。
2人のうち、アガって条件を満たした方がトップ。滝沢はアガりが出ず流局することができればトップ。

勝負の行方は、残りわずかとなった山に託された。

勝負の女神は、滝沢に微笑んだ。
堀・日向のアガリ牌は2人に訪れず流局。

最後まで展開がもつれた第一試合は滝沢の個人4勝目で幕を閉じた。

最後までトップを目指した堀だったが、今回は牌に選ばれることはなかった。

堀がMリーガーの中でも指折りの強者であることは、誰しもが疑わないだろう。

そんな強者が最善を尽くしたとしても、一瞬にしてポイントを奪われてしまう麻雀というゲームは、魅力的であると同時にどうしようもない残酷さを内包している。

レギュラーシーズンは残り各チーム約30試合ずつ。
確率のイタズラを前に、最善を尽くす選手たちを待っているのは果たして──

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