橋を架けよう、村上淳　　残る一歩がどんなに苛烈であっても──【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・2月14日】

今対面の小林がをツモ切って、すら通っているのだ。
小林がじゃなくて、じゃなくて、じゃあを通せるのか。
そして自分の待ちはとのシャンポンだ。

村上は、ラス前に1000ではまだ見えなかったトップに橋を架けた。
300・500をツモりあげて、あとはめちゃくちゃな勇気を振り絞って、
落ちれば奈落の向こう岸に身を投げた。

村上が掴んでいた当たり牌のが下家に流れる。
こんなキツ過ぎるチーテンでも取らなかったら、村上は死んでいた。

そして小林が、山にあった村上の唯一のアガリ牌、を掴んだ。

3900は、リーチ棒込みの4900。

村上38200点、亜樹38100点の試合結果である。
指１本やっとかかった、本当に奇跡の到達と言っていいだろう。

こんなに、１勝というのは厳しいものなのか。
もっと労せずして舞い降りたトップがあったっていいのではないか。

親番で丹念な手順の4000オールを二度成就させ、
ラス前に1000の見逃しまで考慮してギリギリの橋を架け、
打てば死ぬ親リーチに、ただの無スジではない、超危険牌を二枚通す蛮行に身を預けて。

しかし、もうドリブンズには退路がない。
４人で少しでも橋を伸ばして、誰かが飛ばねばならない。

この半荘、亜樹の四暗刻単騎リーチも、魚谷の暗刻落としの放銃も劇的な麻雀の一場面だった。

そしてその32000の陰で──、
村上の初トップを数センチ近づけて、苛烈な最後の跳躍を後押ししたのは、
300・500というノミ手だったのである。