橋を架けよう、村上淳  残る一歩がどんなに苛烈であっても──【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・2月14日】

2月14日(火)第2試合
EX風林火山二階堂亜樹セガサミーフェニックス魚谷侑未から四暗刻単騎をアガったシーンは、
鮮烈な記憶として多くの人の脳に焼きついているだろう。

魚谷を襲った青天の霹靂の瞬間、落胆したのはセガの控室だけではない。

トップ量産が必須である赤坂ドリブンズの選手たちも、亜樹の築いた51600点という霞むような点棒に絶望しつつあった。
同卓の村上淳の点棒は、11400点しかないのだ。

しかしそれを南2局の親番で、村上は少しずつ詰めた。

4000オール。

二人テンパイ。

4200オール。

ここで魚谷のハネツモにより村上の親が落ちての南3局
残るは2局である。
このとき東家の亜樹は38600点、北家村上は32200点の6400点差だ。
ハネマンを被ったのは痛いが、最初の40200点差という途方もない距離からすれば、
目指す向こう岸は目前に迫ったと言っていいだろう。

村上が自風の【北】をポンして【3ソウ】【6ソウ】テンパイ。
アタマの【西】も2枚枯れで、さすがにこれは鳴かないと厳しいところだ。
亜樹にここで連荘させるわけにもいかない。

これを脇からアガると1000点で、オーラス亜樹との差は5400点差になる。

オーラス勝負で5400点を詰める。
1300・2600以上を目指す形になるだろうな、と予見していた。

しかし村上はこのときすでに──、

“出アガリするかどうか”をまず考えていたという。

「5400点差、というのは意外に厳しい。1000・2000も届かないし5200も届かない。
リーチ棒が出ての3900も届かない」

300・500のツモアガリとすることで、現在東家の亜樹とは1600点詰まる。
亜樹とは4800点差になるわけだ。

そして村上の期待に牌は応えた。
早い段階ですぐ出たら見逃したであろう【3ソウ】【6ソウ】は、村上の手に来てくれた。

これが1000の出アガリとは雲泥の差であったことがわかるだろうか。

オーラス、東家のU-NEXT Pirates小林剛からリーチ。

リーチ【白】ドラドラ赤の大物手。

そして村上がド無スジの【9ピン】を一発で掴む。

先ほどの構想通り、リーチ棒が出ての3900というトップに届く状況にはなっている。
ただこれは、恐ろしく危険な牌だ。

ソーズは【1ソウ】【4ソウ】くらい、だが【赤5ソウ】が先に切れていてラス目の親リーチとしては【1ソウ】【4ソウ】残りも考えにくい。

自身が切っている【4マン】を切ってのリーチは、そこをまたぐリャンメンは考えにくい。
マンズはあって【5マン】【8マン】【6マン】【9マン】、シャンポンなら【2マン】くらい。

ピンズは3巡目に【5ピン】が切れていて、リャンメンならかなり【6ピン】【9ピン】、なんと言ってもこの【9ピン】は4枚目だ。

そして村上の手は、一発で【9ピン】を通し、さらに待ち候補として残った【5マン】【6マン】を切らなくてはならないのだ。

傍目にはなかなか伝わらないかもしれないが、
この【9ピン】を切った行為は、とんでもない勇気だと思う。

そして村上がチーして打【6マン】タンヤオドラドラ、3900のテンパイを入れる。
ところがこれも先ほど以上の覚悟の打牌になっていた。

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