村上先輩、その【5S】はロンです 鈴木優に非情の世界を垣間見る【Mリーグ2022-23観戦記2／21】担当記者：ZERO / 沖中祐也

カンでリーチ、三面張でオリ。
点棒状況に合わせ、メリハリが効いている。

当たり前に感じるかもしれないが、カンでリーチを打つ人はこのも押すし、カンをダマにする人はこれもオリている… 気がする。
岡田は勢いとか感情とかに揺らされることなく、冷静に状況を見極めていると感じた。

岡田は次も現物の打。
そのに声をかけたのが優だ。

「ポン」

高め、タンヤオ・三色・赤２の満貫となるポンテン。
危険牌のを切り飛ばしていく。

ただこの時、優の待ちであるは純カラだった。
そしてドリブンズが渇望するドラのが…

優の手元にやってくる。さて、どっちに受けるか。
は無筋、はドラだが筋。

優がこの待ち取りを間違えるわけない。

打として、すり抜けた。
先程も解説した通り、→→の切り巡では通しやすい。
（ドラ表示牌の待ちを固定するとは考えにくいのと、ペンも少なくなる）
それ以上に自分の手牌が満貫確定になるのが大きい。

優は獲物を狙う猫のように鋭い視線を村上に投げかけていた。

当然、優は村上の、そしてドリブンズの状況を知っている。
Piratesはポイントに余裕あるんだから大人しくしていてよ、と感じたドリブンズサポーターもいるかもしれない。

ましてや優にとって、村上は恩師ともいえる存在である。

とある大会で、優はマイナスし、帰り支度をしていた。

（追憶のMより）

その行動を村上が咎める。

（追憶のMより）

村上とて、その大会をマイナスで通過できるなんてことがあるとは思っていない。
これは麻雀に対する姿勢の問題なのだ。
「可能性がある限り、諦めてはいけない」
「今、自分ができる最善を尽くす」

普段陽気で優しい村上だからこそ、この教えが優の身に沁みわたった。
そして優は４回戦が全卓終わるまでしっかり待ち、それ以降の大会も同様に最後まで見届けるようになったのだ。

その教えを授けてくれたリスペクトする先輩に対し、今、猛然と牙をむいている。
このアガリがドリブンズと村上を奈落の底に落とすことになると知っていても、なお。

いや、リスペクトする先輩だからこそ… だ。

卓上に関しては全力で、落ちるものがいればその足を引っ張り、少しでも自分が有利になるように打つ。勝負に対する姿勢を教えてくれたのが村上先輩なのだ。

「明日は我が身… ですから」

そう優は語る。
一見すると華やかなMリーグの舞台も、結局は弱肉強食のサバンナと同じで、負けたものを引きずり落とすバトルロワイヤルだ。
Mリーガー同士、最大の仲間であり最大の敵でもあるのだ。

枚数は村上有利だったのだが

無情にも非情にも、村上のツモ山にが置かれていた。
「8000は8300」

村上は一瞬苦悶の表情を浮かべたが、すぐに「ハイ」といつものように返事をした。

これまでずっとこのような戦いを繰り広げてきたし、これからも麻雀プロである限り、無情な戦いは続いていくのだ。

ドリブンズの息の根を止めたと言ってもおかしくないこの横移動に、私は勝負の世界の厳しさと美しさを同時に見た気がした。