左腕の軌跡は逆襲の狼煙 近藤誠一、完全復活の予兆【Mリーグ2022-23観戦記1/24】担当記者:東川亮

左腕の軌跡は逆襲の狼煙
近藤誠一、完全復活の予兆

文・東川亮【火曜臨時ライター】2023年1月24日

大和証券Mリーグ2022-23は、レギュラーシーズンのおよそ3分の2を終えようとしている。各選手が全力を尽くして戦うも、必ず明暗は分かれる。なかでも特に苦しんでいるのが、この日の第1試合に出場した、丸山奏子近藤誠一だ。何よりチームのために、どうしても勝ちたい一戦。しかし麻雀は、Mリーグは、願えばかなうほど甘い世界ではない。

第1試合

東家:丸山奏子(赤坂ドリブンズ)
南家:本田朋広TEAM雷電
西家:近藤誠一セガサミーフェニックス
北家:仲林圭(U-NEXT Pirates)

9度目の正直となる今シーズン初勝利へ、丸山の出だしは最高だった。配牌から1枚ずつあったダブ【東】とドラ【6ピン】を両方重ねると、1シャンテンになった近藤から【東】が打たれ、ポン。

【白】を仕掛けて1シャンテンだった仲林から打たれた【2マン】を捉え、ダブ【東】ドラドラ赤の12000。スタートで、決して小さくはないリードを築いた。

丸山はこの日、トレードマークとも言えるメガネを外して対局に臨んでいた。心境の変化か気合いの表れか、あるいは他の理由があったのかは分からないが、いずれにせよこの試合がもはやただの一試合でないことは承知しているはず。そして、この程度の加点でやすやすと逃げ切れるほど、Mリーグは簡単ではないことも。

東1局1本場東2局は近藤と仲林による満貫の行って来いで進み、東3局は仲林との2軒リーチを制して700-1300ツモ。一歩ずつ、初勝利へとにじり寄っていく。

東4局、親番の仲林の手牌は、左9枚がマンズ。1巡目にツモった【發】ホンイツの種として残したい牌に見えたが、すぐにツモ切った。この手はマンズ、ピンズの形が良く、ドラ受けもある。無理やり一色手にしなくても高打点に仕上げることは可能であり、むしろそのほうがアガリやすい、ならば不要な【發】は重ねられる前に切ってしまおう、ということだろう。

この局は丸山の手もかなりまとまっていた。3巡目での1シャンテンはシンプルに残す。

しかし丸山の手は思うように伸びず、先制テンパイは仲林。残したピンズを伸ばして2メンツにしての【2マン】【5マン】【8マン】【7マン】待ちはあまりに強烈。

これに、【白】を鳴いてマンズ【2マン】【3マン】ターツを外している途中だった本田が一発で打ち込んでしまい、

裏ドラが乗って18000。仲林は大きな放銃が2回あったが、それを一気に取り戻すアガリになった。

仲林は、どこまでもしたたかだ。南1局では早々に【白】をポンして1シャンテン。トップ目丸山の親番を流しにかかる。

【9マン】をポンしてテンパイ、カン【7ソウ】待ち。現状では出アガリ2000点の仕掛けだが・・・。

【4ピン】を引いてドラの【8ソウ】単騎待ちに受け変え、

すぐにツモって1300-2600、トップ目の丸山を猛追する。確かに、まだ丸山のリードはある。しかし、勝つためにはここからの3局を逃げ切らなくてはならない。

流局が2局続き、南3局2本場。ここは仲林が先制のリーチをかけた。ドラ赤で打点はあるが、待ちのカン【8ソウ】は本田と近藤が2枚ずつ持っていて山に残っていなかった。少なくとも、丸山が直撃を取られるリスクはない。

丸山の手が1シャンテンに。押し返してアガりきれれば、形の上ではドラを2枚以上使うことが濃厚のため、トップにもグッと近づける。ドリブンズファンも、丸山が押し返す展開を期待していたはずだ。

しかし、この男も黙ってはいなかった。本田の切った【西】を見て少考し、覚悟を決めるように深く息を吸い込むと、

ポン。近藤は既に【白】を鳴いている。

トイトイテンパイ。近藤とて、トップが欲しい状況。ここでおめおめと引き下がるわけにはいかない。

その様子を見て、丸山は仲林・近藤の現物【4マン】を抜いてメンツを壊した。

【3ピン】は山に残り1枚。この日解説を務めた土田浩翔は、「こういう手をアガるのが近藤」と話した。だが、【3ピン】より先に【5ピン】【5ソウ】と立て続けに打ちにくい牌を引き、スジの【3ピン】トイツ落とし。放銃してラス落ちするリスクまでは、今は負えない。

一方で、本田が【赤5ソウ】を鳴いてテンパイ。タンヤオ赤赤は、アガれば少なくともオーラス満貫でラス抜けできるところまで迫れる。この鳴きと通した【5ピン】が、ドラマを生んだ。


近藤が引いてきたのは、4枚目の【2ソウ】。まずは、直前に本田が切った【5ピン】を合わせる。

次巡、【4ソウ】を引いてテンパイ復活。もっとも安全に進行できるのは、【5ソウ】を切ってのカン【3ソウ】待ち。【3ソウ】【6ソウ】待ちだと、フリテンになっていて出アガリができない。

近藤は時間を使い、そしてハッキリと口にした。

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