石立から腹をくくったリーチの発声が出た。
二軒リーチで挟むことで、脇からの対子や暗刻落としも狙える魅惑の単騎で勝負だ。
素点が足りない上にライバルからのリーチ。聴牌でぶつけにいった松本の手に浮いていた余剰牌は……
だった!!
松本からすればまたも激痛のマンガン放銃。これで石立との素点差も厳しくなっての二着陥落となってしまった。反対に石立は松本・多井と差をつけて、一気にトップ目まで駆け上がる。
さらに【南2局】。前局、薄い和了りを拾ったことのご褒美のような配牌。
マンガン聴牌を入れた松本からまたしても出和了り。
【南2局1本場】親番でまたしても聴牌を入れる。松本のリーチにも果敢な押しを見せるが、最後はあえて伏せて残り2局、多井・松本の親番を躱し切る選択とした。
しかしここからが長い半荘の始まり。まずは番犬松本が親番をかじりついて離さない。
石立と多井の二軒聴牌を躱す、驚異的な粘りを最後まで見せるが……
【南3局6本場】、石立がこのチーから発進し……
ついに松本の連荘を止める!しかもタンヤオドラドラドラドラ赤、跳満のツモアガリでなんと多井のマークから抜けるトータル一位まで上り詰めた!
オーラス、トータルポイントはこうなっている
坂本 +37.2
石立 +63.0
松本 -59.1
多井 -41.1
一見多井は絶望に見えるが、もう和了りに来られない松本を捲ればほぼ坂本を躱せている算段。6000オール一発でゲームはもうわからなくなる。
一人聴牌を挟んで【南4局1本場】、石立・坂本の二人聴牌をすり抜けて、6000オールのリーチまでこぎつけるスター性。これが麻雀星人、これが多井隆晴。だが……
最後の一牌に届かず。
【南4局2本場】、勝負を決めるリーチツモ赤。これにて終局!坂本・石立の勝ち上がりとなった。
多井と打つのを楽しみにしていたという石立。
実はかつて石立がプロ試験を受けた際、まだ連盟在籍時代の多井が面接官だったという。
今では団体こそ異なれど、同じ麻雀という世界の中で、彼らは再び巡り合い、そして戦った。
もちろん多井の方も同じ運命を感じて……
?
……まあそれはともかく。
「一試合でも長く打ちたい」
努力の天才:石立の夢の旅路は、来週いよいよ終着点にたどり着く。