南1局1本場
苦しくなった或世だが、その心は折れてなどいなかった。
を引き入れてのテンパイは、待ち。しかしを自分で切っており、フリテンだ。
「フリテンでも行くか!」
或世はラス目。フリテンであったとしても、ここはリーチが良いように思う。
直後に、ヘラクレス因幡からのリーチが入る。
カンドラ1で、因幡もまた、リスクを負って勝負に出た。
は3枚、は1枚。或世はフリテンでこそあるものの、3対1の勝負。
勝負は残酷に、そして一瞬で決着した。
或世から因幡への、一発放銃。
或世はさらに5200点を失ってしまう。
「クッソ……!」
その声は震えていた。
……それでも。
「振り返るな、今だ今! 考えろ考えろ考えろ」
或世は最後まで前を向き続けた。
それが或世の良さで、この経験は、宝物だ。
この一発勝負で、結果が出なかったとしても。
この経験が、もっと或世を強くしてくれるはずだから。
南3局
2着につける因幡が、このカンからチー。
2着ではあるが、グラディウス1着のこの並びは因幡からすれば悪くない。
自分には親番も残っているため、ここはアキレスの親番を蹴るためにも積極的に仕掛けていく。
因幡の良さは、この仕掛けへの思い切りの良さだ。
見事アガリきって、1000、2000の加点。
これでファイナル第2試合は、オーラスへと突入する。
オーラスも、天開は怖がることはなかった。
安全牌候補の北も打ち出して、自分の手牌を目一杯。
最後は、アガって決める。
天開の強い想いが伝わってくる。
をチーして、カンのテンパイ。
アガれば、トップ。
苦しかった日々の出口は、もうすぐそこまで迫っている。
地獄のような日々の自分にも、今なら言える。
その努力は、決して無駄なんかじゃないって。
4位は、或世イヌ。アキレスは、これで優勝への現実的な条件は無くなってしまった。
インタビューでの声には、涙が混じっていた。
「麻雀歴が短いのに」「よく頑張った」
それらの声は、或世にとってみれば、きっと関係なかったはずだ。
アキレスの一員として、必死にこの数か月努力をしてきて。
結果が、欲しかった。その想いはきっと変わることはない。
個人的な話になってしまうが、また来年も、或世の麻雀が見たい。
この努力は、悔しさは、無駄なんかじゃなかったって胸を張って笑って欲しい。
その時を、ずっと待っている。
3位に、鈴木勝。
勝も声には確かな悔しさが混じっていた。
ドラフトで指名されてから、勝は本気で取り組んできた。本気で取り組んできたからこそ、悔しいのだろう。
成長の物語を、勝もしっかりと見せてくれた。
アトラス連覇の夢は、まだ繋がっている。あとは咲乃に託そう。