これは、が場に2枚切れであるためにションパイの単騎から単騎には変えないだろうという読みだったのだ。
渋川の単騎は、渋川が打のその1巡に、園田にアンコで残り1枚の牌を引いた事象でしか起こり得ない待ちだ。
しかし、そんな平面上の低い確率に園田は決して甘えなかった。
そして渋川は諦めたようにを離す。
園田から出ないのでは、この待ちではアガれない。
2枚切れだが単騎に変えるしかない。
それを見て、園田はこの夜かわされた、お互いの心を探り合うLINEを終えるように、を合わせる。
「園田さん、アンコからでしょう、切ってください」
「渋川、単騎待ちだよね、切らないよ」
「止めたんですか」
「そうだよ──」
それは、牌だけが紡ぐ言葉で、お互いがお互いを尊重し、認め合う恋人たちのような会話だった。
口にせずとも、それぞれが思いの丈を牌に落として、心を焦らす遣り取りをするのを私たちは見た。
今年も、牌に魅せられて牌だけで繋がる恋人たちの新しい季節が始まった。
これから繰り広げられる、筋書きのない数多の心震わせる群像劇を──、
また皆さんと一緒に楽しみたいと思う。
日本プロ麻雀協会1期生。雀王戦A1リーグ所属。
麻雀コラムニスト。麻雀漫画原作者。「東大を出たけれど」など著書多数。
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Twitter:@Suda_Yoshiki
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