2023年9月19日(火)の第1試合、南4局3本場のシーンである。
南家のKADOKAWAサクラナイツ・渋川難波がドラのをポンしていてテンパイ。
それを受けての北家赤坂ドリブンズ・園田賢の手牌だ。
ラス目の渋川とは12100点差、3着目の東家とは9900点差の2着目である。
渋川がマンガンなら放銃で3着落ち、もう1ハンでもあればハネマンでラスになる。
ここは絶対放銃できない局面なのである。
皆さんなら何を切るだろうか。
渋川の最終手出しは14巡目ので、以降に通った牌は園田の手の内にはない。
トイツのは自身から3枚見え、渋川に対してスジの牌だ。
園田はこれを含め2回打牌をしなければならない。
が当たるとすれば、渋川は残り1枚のを持っていて、その単騎待ちであった場合のみである。
見れば見るほど、に手を掛けたくならないだろうか。
園田は卓上に目を落とし──
場に3枚目のを絞り出した。
このとき渋川の手牌は、
正にこの単騎。がアンコ、赤1でハネマンの手であった。
ここで、渋川と園田の打牌と思考を振り返ってみよう。
牌だけが散りばめられたこの卓上で、一流の者同士が汲み取る声なき声の会話が、確かにそこにあったのだ。
渋川は12巡目、このカンハネマンテンパイにを持ってくる。
カンも悪くはなさそうだが、トップ目とは19500点差。
いったん単騎に変えてソーズを持ってくれば、ホンイツになって倍ツモのトップまで狙えるため、ここは打とした。
この瞬間は、もちろん誰も単騎待ちかどうかはわからない。
園田は同巡、現物のトイツを1枚切る。
そして12巡目、この手牌になってしばしの少考。
渋川だけではなく、下家の親に対しても今後の安全牌は乏しい。
場に2枚切れのは持っておいて、ここで渋川のスジであるをアンコ落としにかかった。
もちろん前巡のより先にを並べる手順もあるが、も3枚見えでの安全度はそれなりに高く、
場に2枚目のを河に見せておくことは、後に親の単騎リーチをしにくくさせることもある。
12巡目の現段階では、渋川か親のダマテン単騎があるリスクはそうないと踏んでの打である。
そして間髪入れず、渋川が引いてきたのはそのだった。
打で待ち変え。
このとき、渋川にも確信があった。
園田がションパイのを切ってきた。
これは1枚や2枚持ちの牌ではない。
単騎やシャンポンに当たるリスクの牌を、ここでおいそれと切るような園田ではないはずだ。
園田のアンコ落としを射止めよう──、渋川は息を殺してそれを狙った。
まず園田はここからを渋川に合わせて切る。
それを親がチー。場にが4枚見えた。
そして冒頭の局面になったのである。
渋川はと終盤に手出し。
現状は共に4枚見えの牌になっている。
園田から見て、切りの瞬間では単騎待ちというのはわからなかった。なのでも1枚は切った。
しかしという単独牌の手出しで、そこに複合形やスライドがなく、単騎を転がしている様子を園田は感じ取った。
簡単に、思うようにはいかないよと──、熟慮の末に園田はを選び抜いた。