牌だけが繋ぐ恋人たちのLINE 園田賢と渋川難波の心焦らす駆け引き【須田良規のMリーグ2023-24セレクト・9/18】

2023年9月19日(火)第1試合南4局3本場のシーンである。

南家のKADOKAWAサクラナイツ渋川難波がドラの【南】をポンしていてテンパイ。
それを受けての北家赤坂ドリブンズ園田賢の手牌だ。

【3マン】【8マン】【8マン】【9マン】【9マン】【赤5ピン】【8ピン】【1ソウ】【3ソウ】【4ソウ】【4ソウ】【6ソウ】【9ソウ】 ツモ【5ソウ】

ラス目の渋川とは12100点差3着目の東家とは9900点差の2着目である。
渋川がマンガンなら放銃で3着落ち、もう1ハンでもあればハネマンでラスになる。
ここは絶対放銃できない局面なのである。

皆さんなら何を切るだろうか。

渋川の最終手出しは14巡目の【4マン】で、以降に通った牌は園田の手の内にはない。

トイツの【9マン】は自身から3枚見え、渋川に対してスジの牌だ。
園田はこれを含め2回打牌をしなければならない。
【9マン】が当たるとすれば、渋川は残り1枚の【9マン】を持っていて、その単騎待ちであった場合のみである。

見れば見るほど、【9マン】に手を掛けたくならないだろうか。

園田は卓上に目を落とし──

場に3枚目の【3マン】を絞り出した。

このとき渋川の手牌は、

正にこの【9マン】単騎。【白】がアンコ、赤1でハネマンの手であった。

ここで、渋川と園田の打牌と思考を振り返ってみよう。

牌だけが散りばめられたこの卓上で、一流の者同士が汲み取る声なき声の会話が、確かにそこにあったのだ。

渋川は12巡目、このカン【5マン】ハネマンテンパイに【白】を持ってくる。

カン【5マン】も悪くはなさそうだが、トップ目とは19500点差。
いったん単騎に変えてソーズを持ってくれば、ホンイツになって倍ツモのトップまで狙えるため、ここは打【6マン】とした。

この瞬間は、もちろん誰も単騎待ちかどうかはわからない。

園田は同巡、現物の【中】トイツを1枚切る。

そして12巡目、この手牌になってしばしの少考。
渋川だけではなく、下家の親に対しても今後の安全牌は乏しい。

場に2枚切れの【中】は持っておいて、ここで渋川のスジである【9マン】をアンコ落としにかかった。

もちろん前巡の【中】より先に【9マン】を並べる手順もあるが、【8マン】も3枚見えで【9マン】の安全度はそれなりに高く、
場に2枚目の【中】を河に見せておくことは、後に親の【中】単騎リーチをしにくくさせることもある。

12巡目の現段階では、渋川か親のダマテン【9マン】単騎があるリスクはそうないと踏んでの打【9マン】である。

そして間髪入れず、渋川が引いてきたのはその【9マン】だった。
【4マン】で待ち変え。

このとき、渋川にも確信があった。

園田がションパイの【9マン】を切ってきた。
これは1枚や2枚持ちの牌ではない。

単騎やシャンポンに当たるリスクの牌を、ここでおいそれと切るような園田ではないはずだ。
園田の【9マン】アンコ落としを射止めよう──、渋川は息を殺してそれを狙った。

まず園田はここから【4マン】を渋川に合わせて切る。

それを親がチー。場に【6マン】が4枚見えた。

そして冒頭の局面になったのである。

渋川は【6マン】【4マン】と終盤に手出し。
現状は共に4枚見えの牌になっている。

園田から見て、【6マン】切りの瞬間では単騎待ちというのはわからなかった。なので【9マン】も1枚は切った。

しかし【4マン】【6マン】という単独牌の手出しで、そこに複合形やスライドがなく、単騎を転がしている様子を園田は感じ取った。

簡単に、思うようにはいかないよと──、熟慮の末に園田は【3マン】を選び抜いた。

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