①
注目すべきはまずは瀬戸熊のリーチ。
トップ目の瀬戸熊はと内側から外した後にドラを切ってのリーチとなっている。点数状況的にも打点というよりは和了りやすさに勝算があるリーチのことが多そうだ。真っ先に思い浮かぶのは両面待ちのリーチだろう。
それを踏まえて考えると、通っていない無筋は既に–、–、–、–の四筋しか残っていない。字牌も全部通っているためシャンポン系のリーチの可能性も薄く、白鳥の手に浮いているはかなり切りにくい牌だといえるだろう。
②
今度は小林の手を考えてみよう。
最初こその対子落としの後に現物切りと回ったように見える。
しかしその後という両無筋を押した後に、手から安全牌のを打ってきている。さらには無筋のもツモ切りだ。
いくらラス目とはいえこの押しっぷりは尋常ではない。聴牌が入っていると見たほうがいい。
先ほど述べたように、瀬戸熊の手は面子手の両面系であることが多そうだが、小林の手はどうだろうか。
白鳥の目からは、、といった順子を構成するのに必要な中ごろの牌が各色分断されている。さらに小林は第一打なのに、の対子を持っていたことがわかっている。これは配牌時点で対子手の構想があったことが伺えよう。対子落としがあるとはいえ、ドラのの単騎待ちの七対子が出てきてもおかしくない。
以上を踏まえると、
①から、が瀬戸熊に打てない。
②から、が小林に打てない。
白鳥の目は全ての情報を掴んでいた。だからこそ、この瞬間にこの手は手じまいとなったのだ。
この半荘、白鳥は滝沢まで肉薄するも、結果は3着であった。
冒頭のエピソードの先輩プロとは白鳥翔その人である。
これだけの目を持っていてなお、白鳥は自らを未熟と語り、検討配信においても様々な意見に耳を傾けていた。
今なお迷い、時に結果に翻弄されながらも、白鳥は自らの思い描く理想を目指し、完璧な正解を求めてもがき続けている。