白鳥はもがく
未だ誰にも分からない理想、
その輪郭に触れることを
夢見て
文・渡邉浩史郎【金曜担当ライター】2023年9月29日
第2回戦

東家:白鳥翔(渋谷ABEMAS)
南家:瀬戸熊直樹(TEAM RAIDEN / 雷電)
西家:滝沢和典(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
北家:小林剛(U-NEXT Pirates)
こんなエピソードを見た。
とある若手プロが勇気を出して、尊敬する団体の先輩プロに「麻雀を教えてください!」とメッセージを送ったという。
それに対する各メディアで大活躍している先輩からの返事は「僕も未熟だから人に教えることはできない。一緒に考えることはできるからそれでよければやろう! むしろ僕の手で疑問に思うことがあったら言ってほしい」というものであった。
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「これはかなりチーしないとだめだなと思いましたね」

白鳥が試合後、自身の検討配信で真っ先に悔いたのは開局のこの場面であった。

親番でタンヤオドラドラだが、8巡目で面子なし。なるほど確かに形だけ見れば仕掛ける一手に見える。
しかし、678三色での仕掛けてマンガンに目が行ったことに加え
・対面滝沢の落としから速度を感じるし、
も持っていそう。
・小林のの後の
手出しでマンズ下
を持っていそう。
といったところからがポン材になる形で仕掛けだすことに弱さを感じてしまい、声が出なかったという。
この手を見た視聴者の中にも鳴く人、鳴かない人がそれぞれいるだろう。
しかしその中でが弱いという視点を持っている人は、果たしてどれだけいるだろうか。
もちろんが弱いという視点を持っていなくても、この手を問題なく和了れる事のほうが多い。
他のターツが伸びたりポンできたりでを鳴く必要がなくなったり、そもそも持たれていそうな他家の
自体が余って切り出されるケースもあるからだ。そういうところまで含めて、この手は鳴いたほうがいいという判断が下される。

河から生まれる情報。そして情報から生まれる読みによる推論と、麻雀の根底にある数理。
白鳥は見つめ続けていた。

【東2局1本場】のこの場面についてもそう。

白鳥は瀬戸熊から出たこのを鳴かなかった。
ターツ落としの後にと手出ししてきたラス目の小林に対して、ドラの浮いているこの手から鳴いても間に合わないとの判断。実際に小林はドラが対子でターツの決まったリャンシャンテンであった。
そしてこの半荘。白鳥が明確に失点を防いだのが【東3局】。

瀬戸熊の先制リーチを受けて

回っているうちに絶好のカンを引き入れる。完全な現物もないため攻め返したいところだが、気になるのは上家の小林。
は明確に押してきている。

ひとまずは両者に片筋のをプッシュ!

も一応瀬戸熊の宣言牌の筋、小林には無筋だがプッシュ
聴牌が入れば十分前に出る構えだ。

14巡目、ドラのを引いてきて、これは瀬戸熊の現物。小林は
も
も切っているため両面ではあたらない牌ではあるが……

ここで降りを選択。止めたは……

小林に12000の放銃をする牌であった。
小林はの対子落としをしているため、七対子には見えない。
となにかのシャンポンであれば、
ツモ切りのところで現物
を切って
に受け変えてのリーチになっていそうだ。
直前のが誘い水のように両面
をも否定しているため、聴牌料欲しさにふらっと前に出てもおかしくないところだが……