こちらが松本視点での捨て牌。たろうが→と切っている。
よくあるのがの二度受けの形からを払ったケースで、その場合はたろうの手に待ちが残っている。
しかし今回は松本の手に4枚目のがあるため二度受けのパターンは否定される。別の二度受けパターンであるだったケースは、たろうが序盤にを切っているためこれも考えられない。
そもそもたろう視点では58pの場況が非常に良く、普通の手なら残したいはず。
ではたろうはどんな手なのか?
松本が導き出した答えは、七対子だった。
七対子であれば場況の良いも必要なく、が1枚切れているので→の切り巡になっているのも説明がつく。
松本の読みはズバリ当たっていた。
たろうは途中まで目一杯に手を膨らませ、七対子は狙いつつも、テンパイ料が偉いためいつでもメンツ手に移行できる構えを取っていた。
しかし、ラス目の堀が・とリャンメンを払ったのを見て、守備力を重視し七対子一本に絞ったところだった。
たろうからすれば堀がツモってもトップになるため、堀に手が入っていると察知すれば無理する必要はない。
この情報を逃さずキャッチし、たろうの手が七対子であると看破した松本。たろうが七対子であるなら、流局までにテンパイを入れられない可能性が充分にある。
攻めるしかない状況だった松本に、ノーテン終了の選択肢が生まれる。
そして堀からリーチが入る。
のトイツ落としで様子見をした松本。
リーチがかかった後のたろうの手出しが・・と安全そうな牌しか出てこないのを見て、たろうのノーテンを確信する。
完全に手を壊す打を選択し、堀がツモらず流局する未来に望みを託した。
結末は紙一重だった。
実は堀のは山に1枚しかなく、ツモることができなかった。
松本のオリを察知したたろうはテンパイをなんとか入れようと終盤に仕掛けを入れる。
しかし惜しくもイーシャンテンより先に進まず、ノーテンでの流局となった。
最後が欲しいイーシャンテンで終わったため、ここでを1巡だけ残していたら結末は違っていたかもしれない。
しかしたろうの立場からすれば、がむしゃらに仕掛ければ堀のツモ番を飛ばすことになり、堀のツモ確率を下げることになるため、テンパイへまっすぐ進めるのが正しいのかも判断が難しい。
牌山によっては、たろうが逆転する未来も充分にあり得たが、今回は冷静な判断を見せた松本に軍配が上がった。
Mリーグ開幕から、アベマズには嫌な流れが続いていた。
毎年ファイナルまで残っていたアベマズだが、今シーズンはなんと現在最下位。1戦目で日向がラスを引いたことでスコアは-200pt近くまで減っていた。
なんとしてもトップが欲しい状況で、冷静な判断力でトップを勝ち取った松本には、今シーズンもポイントゲッターとしての活躍を期待せざるを得ない。
チームの流れを変える若きエースの1勝──
アベマズの反撃を予感させる1戦となった。
日本プロ麻雀連盟所属プロ。株式会社AllRuns代表取締役社長。業界を様々なやり方で盛り上げていくために日々奮闘中。Mリーグ観戦記ライター2年目。常に前のめりな執筆を心がけています(怒られない範囲で)。Twitterをフォローしてもらえると励みになります。
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