手牌と思惑の嵐の中で
村上淳がつなぎ
照らした一筋の光
文・東川亮【木曜担当ライター】2023年2月23日
2月21日のMリーグ中継の最後に告知された次戦の組み合わせを見て、胸が高鳴った。現時点での5位から8位までのチームによる直接対決、今シーズンの行方を占う、注目の1日である。特に最下位の赤坂ドリブンズにとって、2月23日の敗戦は、終戦を意味するかもしれない。筆者のような箱推し、Mリーグのファンにとっては本当にワクワクする対戦カードだが、チームのメンバーや関係者、そしてファンのみなさんは、どのような思いでこの日を迎えたのだろうか。
第1試合は、想像をはるかに超える結末を迎えた。トップ目に立っていた園田賢が、自身のMリーグ初となる役満・国士無双を堀慎吾から直撃。自身のトップをさらに大きなものにすると共に、サクラナイツを一気にセミファイナルボーダー争いに引きずり込む。
TEAM雷電もポイントを減らし、4チームの差はグッと詰まった。次戦の結果次第では、5位から7位までの順位が一気に入れ替わることも起こりうる。もちろん、ドリブンズも園田のトップだけでは足りず、狙うはデイリーダブル。
21時58分、思惑入り乱れる第2試合の火ぶたが切って落とされた。
第2試合
東家:本田朋広(TEAM雷電)
南家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
西家:村上淳(赤坂ドリブンズ)
北家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
村上淳、託された思いと課せられた責任
赤坂ドリブンズの2戦目を任されたのは、村上淳。今シーズンはわずか1勝、個人成績31位と不振だが、それでもチームに対する彼への信頼は揺らがない。
東1局、その村上に配牌1シャンテンという手が入る。残る受けはよくないが、シャンテン数ではこの時点で圧倒的にリード。あとはリーチ超人がどのような形でリーチまで持ち込むか。
テンパイは6巡目、配牌からあったペン待ちでリーチ。先んじて2巡目にはを切っており、は比較的出やすそうな待ちに見える。
リーチの一発目、本田はメンツが完成するを引くもツモ切った。村上は以外に中張牌を切っておらず、親番で真っすぐ押し返そうとすればが出そうだったが、ここは現状の遅れを素直に認める形で受けに回る。
渋川もいったんはチートイツでテンパイしたが、無スジを押せず撤退。そして安パイが切れた本田が、通っていたのスジでを選んでしまった。
リーチドラ、裏1の5200は、ファーストヒットとしてはそこそこのアガリで、まずはリードを奪う。
そして、ここからの村上はとにかく甘えなかった。
次局、村上はまたも配牌1シャンテンという手をもらうが、テンパイしないまま本田、渋川のリーチを受けた。その後、スジのを切ればテンパイという形になったが、テンパイは取らず、しっかりと現物を抜く。
先のリーチを本田にツモられ逆転を許した東4局も、2軒リーチを受けた後に先制親リーチの中スジ、追っかけリーチの片スジであるを切ればテンパイが取れたが、ここも切らずにスジである2枚持ちの切り。
チンイツ1シャンテンになるもツモ切り。テンパイへのより広い受けは残しつつも、あくまでも守備的な進行をしていく。
ハイテイ手番でを切ればテンパイとなったが、切らず。目に見えている相手の攻撃に対し、テンパイ料ほしさでうかつな牌を切ることはしない。
その我慢は全て、失点を最小限に食い止め、攻めるべき手で思い切り攻めるためだ。先制の待ちリーチは、自身の目からが4枚見え、も3枚見えで、高目の1枚は国士無双以外では使えない牌。ならダマテンでも出アガリ満貫だが、先制で待ちもそれなりに良いなら、最大加点を目指す。
はリーチ時点ですでに山には残っていなかったが、をツモって満貫。これで本田を再びかわし、トップ目に浮上して南場を迎えることとなった。
村上は愚直で、責任感の強い男である。自身を快く送り出してくれた仲間、応援してくれるファンのために。やるべきことはいつもと同じでも、この一戦に懸かる期待、懸かる責任がいつも以上に大きいことは、痛いほど感じていたはずだ。
渋川難波、1牌を止めて、1牌を求めて
KADOKAWAサクラナイツは2戦目に、今シーズン加入した新戦力・渋川難波を送り出した。優勝チームに加入した彼にとって、個人・チームともに、現状は不本意極まりないはずだ。一方でこの大一番は、たまった鬱憤を晴らし、チームの巻き返しを図るためには最高の舞台だとも言える。
だが、東場では3度の追っかけリーチが全て空振りに終わり、南場の親番を迎えたときには、微差とは言えラス目に後退していた。
その親番で、渋川にチャンス手が入る。マンズのホンイツ、一気通貫がハッキリと見える2シャンテン。
一方で、村上の手も良かった。役牌のがトイツ、その他の形も良形ばかりでかなりまとまりやすそう。
渋川に先んじて、村上が先制テンパイを入れる。をポンして待ち。
渋川もすぐに追いついた。とのシャンポン待ち、相手の手を止める意味でのリーチも考えにあったかもしれないが、ここはダマテンでよりアガリ率を高める選択とした。このままでもツモか南の出アガリで満貫、安目ロンでも7700と、打点的には十分な威力がある。