手牌と思惑の嵐の中で村上淳がつなぎ照らした一筋の光【Mリーグ2022-23観戦記2／23】担当記者:東川亮 | キンマweb |『近代麻雀』の竹書房がおくる麻雀ニュース・情報サイト

リーチしていたら、このは止まっていたかもしれない。だとすれば、ダマテンは渋川のファインプレーだった。

トップ目からの高目直撃という、渋川にとってベストの結果。

しかし次局、村上がこの試合3回目のリーチで3回目のアガリを決め、再び渋川を逆転。渋川も仕掛けを入れてリーチをつぶしに行ったが、実らず失点を喫し、再び3着目へと後退してしまった。

村上の勢いは止まらない。迎えた南3局の親番では、ドラのを3枚使い切ってのピンフテンパイ・待ちをダマテンに構えた。残り局数を考えても、この満貫をアガりきれば、ほぼ決定打。捨て牌もそれほど目立ってはおらず、アガリは時間の問題かに思えた。

渋川の手からは、いつが打ち出されてもおかしくはなかった。まずはここ。を引いたことで、を切るとリャンメンリャンカンの1シャンテンにとることができる。

しかし、渋川はを切った。がどちらも自身から2枚見えで、巡目を考えるとやや薄い。それよりもポンしてテンパイを取れる牌を優先した、ということだろう。

危機を逃れた渋川に、再度危険が訪れる。を引き、を切ればが受けとして増える形に。

渋川はこれも拒否してツモ切り。の受けも、が2枚切れではそれほど感触がなかったことから、受けを優先する。どちらかというと自分のテンパイやアガリを見ての選択だったそうだが、それが最悪の放銃を回避することにつながった。

「マジ危ねえ・・・」
流局し、村上が開けた手を見て、渋川の顔はこわばっていた。

ピンチの後にはチャンスあり。南3局2本場、渋川がというこの試合一番の待ちでリーチをかけた。打点の面でも、タンヤオピンフ赤赤、ダマテンでも満貫はあるが、ツモってハネ満、アガリ方次第で倍満も見える大物手。リーチ時、山には待ちが5枚も残っていた。

同巡、本田も追いついてリーチ。ピンフイーペーコードラドラと打点こそ渋川にひけは取らないが、待ちは山に1枚。普通に考えれば、渋川が勝つ勝負のはずだった。

だが、「普通」がそのまま姿を現すとは限らない。ツモれず打たれず、渋川の顔に焦燥がにじむ。

結果は流局。有志の計算によると、この局が流局になる確率は6%ほどらしい。とはいえ、ゼロでない以上はどんなことだって起こり得るのが麻雀である。この日、渋川は実に5回ものリーチをかけたが、全て不発に終わった。

本田朋広、チームのために今すべきこと

TEAM雷電がこの正念場に本田朋広を起用したのは、もはや必然と言っていいだろう。個人成績4位、今なおMVP候補の一角に名を連ねる彼は今や、名実共に雷電のエースである。

もちろん、勝ちたい気持ちは強かった。しかし麻雀は気持ちが強ければ勝てるようなゲームではないし、そもそもこの卓につく全員が同じ思いを持っている。本田はオーラスを、3着目で迎えていた。供託が多くたまっており、村上を逆転する条件は、3900直撃か1300-2600ツモ、村上以外からは満貫出アガリ。

赤の入ったMリーグルールでは、決して不可能な条件ではない。しかしそれは、材料がそろえばの話だ。本田の手は中がトイツで役こそ見えるが、打点の見通しは全くつかない。もたもたしている内に村上や渋川にアガられてしまえば3着終了、さらにチームが窮地に追い込まれるし、親に連荘でもされようものならラス落ちの可能性すら出てくる。