結局、このあとも浮上のきっかけは掴めず、猿川は4着でこの半荘を終えた。
トップは瑠美。
麻雀の「むごさ」を体現した、半荘であった。
猿川は、
「河で打つ」
のが得意な選手だ。
大三元狙いの局も河に工夫を凝らしていたが、他には、
「悪い手のとき、河に何を並べればいいか」
を強く意識していそうだと思う。
例えば、東1局1本場は、
ここで場に3枚見えているを切って、
まで続けて打ったのは、
「が薄い」
という情報をわざと出すためだ。
門前では厳しい手。もし、下家の親の園田がチーをしてくれたら、リーチがくるよりは良い。
このように、「他家がミスリードをしてくれる可能性を高める」のが狙いだろう。
順番は前後するが、
東1局0本場でも、ここからマンズの孤立牌や字牌ではなく「4枚目の」を切って、
園田からチーが入っている。
上記の例とは違うが、「河に意識を向けさせる」という意味で似たような戦術を使う選手では、勝又が挙げられる。
勝又は「悪い手のときには中張牌を余らせて、早そうな河を作る」のが得意だ。
狙いとして、「他家が間合いを読むのを難しく」しつつ、スリム化も兼ねている。
例えば、
この手から前巡に、今を切ったのは、
「速度的に後手濃厚」「は安全牌」「は絞る」「123の三色を含めて、ドラのを使わないと大した手にならない」「が1枚切れ」
といった諸要素もあるが、役牌に続けて→と並べ打ちして「河から速度感を醸し出す」ことも狙いとしてあるように思う。
話を猿川に戻すが、猿川は前述のポーカーフェイスに加え、打速に優れているのが長所なので、打っているときには他家に圧力もかかっているだろう。
もちろん、「河で打つ」は攻撃面でも当てはまる。
別の日のシーンになるが、11/3(金)2試合目に、
一発でをとらえた18000も、
この打が、スパイスとして効いている。
789三色もあるが、あえて「より先に」を並べたのは、からのカン待ちはないと読ませて、最終的にで待つための布石だ。
こういった「河を使った打ち方」というのは、いわば変化球のようなものだろう。
そして、変化球は「ストレート」と併用することで、鋭さを増す。
しかし、猿川には「ストレートに進められるいい手がなかなか来ない」のが、ここまで厳しい戦いになっている原因であると考える。
また、ひとひねりした愚形待ちは、本手に真っ直ぐこられると弱い。
この記事で最初に紹介した、
瑠美への12000放銃も、
場況よしと見た、残り2枚での愚形リーチのみを打った局のものだった。
立体図を見てみよう。
確かに、切り出しを見ても対面の高宮や、上家の瑠美はもうを持っていなさそうだ。
園田も持っていたら対応して切りそうではあるが、仮に園田が持っていたとしても1枚山にいる。
よって、猿川はリーチの決断をした、という旨をインタビューでも語っていた。「最近の弱気」を払拭するためのリーチ、とも話していた。
ただ、それでも「中盤を過ぎた愚形リーチのみ2枚待ち」であることに変わりはない。リターン自体が小さいのはネックだ。
他にも、完全先制ではなく高宮が役牌を2副露していること、安手の少ない親の瑠美も仕掛けていることもふまえて、私はダマにしそうである。
ルールこそ違えど、麻雀AI「NAGA」ニシキバージョンの解析を見てみると、