萩原と多井の差は、6800点。
また、太と茅森の差は、7800点。
場に2800点が落ちている状況で、
多井はここから、
打とする。
が出来ると役なしになってしまう。や、が伸びてのピンフでのアガリを見つつ、上家萩原の現物を残した格好だ。裏目のは567三色でカバー出来る。
そこへ、
「チー」
太が動いた。
切ったのは、「場に2枚目」となる。
これを多井は、
見送った!!
ノーテンでも伏せればトップとなる状況。
しかも、対面の太は、
ドラのをすでに切っている。
多井の手に赤があるので、太がタンヤオなら赤赤でも3900は5700。多井は太に放銃してもトップだ。鳴かなければ、手にある牌全てが差し込み候補として利用出来る。
一方で、を仕掛けるとどうだろうか。自分がアガリに向かうため、使っている牌を太に抜きづらくなる。
さらに、安全牌候補のが手から消し飛んでしまう。そうすると、茅森や萩原からリーチが来たときに、手詰まる可能性が劇的に上がってしまう。
萩原に迫られてもなお、多井は慌てずにをスルーし、「選択肢の多い」道を選んだ。
ところが、
この手がなんと、2巡後にテンパイを果たす。
ここまで、丁寧に、丁寧に打ってきた「守備の化身」多井隆晴は、
「リーチ」
リーチをかけて勝負に出た!!
まず、リーチ棒を出したとて、太に3900を打っても自分がトップという条件は変わらないのが大きい。
そして、流局すれば伏せてトップだが、その前に萩原がアガって自分はまくられてしまう可能性もある。点差を考えても、難しい条件ではない。
ならば、絶好にも見えるこのソウズリャンメンで勝負を決めよう、というリーチだ。
態勢が整うまでは鉄壁の姿勢を崩さず、戦える手になったなら躊躇なく攻め立てる。
こうやって、ギアを切り替えられたものだけが、
栄光を手にすることが出来る!
そう、多井隆晴は「守備の化身」ではなく、「麻雀の化身」であった。
守備に回る局面が多くても、こうして的確に攻める判断力があるからこそ、勝つことが出来るのだ。
このアガリが決定打となり、多井がトップ。
ABEMASは松本→日向→多井のリレーで3連勝を決めた。
インタビューでは、
付けたバッヂにちなんで、
「UFO大好きです!」
と語った多井。
一方で、YouTubeでは「やだよ、麻雀…」とボヤくことも多い。
ただ、
試合が終わったあとに深夜まで、これほど楽しそうに麻雀の話をする多井を見ると、
「本当はきっと、麻雀も大好きなんだろうなぁ」
という思いも湧いてきた、そんな夜であった。