「きっかけ」を作るため__ 南1局の攻め、 瀬戸熊に真意を聞いてみた【Mリーグ2023-24観戦記 1/29】担当記者 #江崎しんのすけ

789の三色が見える手牌。ラス目なので高打点を狙いたいところだが、2枚目の【發】が出てポン。【發】・三色・ドラの3,900点ルートに切り替える。

そしてすぐにテンパイ。

カン【8ピン】待ち。安目を引いてのテンパイだが、すぐに【赤5ソウ】を引き3,900点になる。

そこへ菅原からリーチがかかる。

【1ピン】【9ソウ】のシャンポン待ち。赤が2枚でツモればトップ戦線に加わることができる。

リーチ一発目に瀬戸熊は全く通っていない【6ソウ】を引くが…

お構いなしにツモ切る!

同巡、親番の園田がテンパイを入れる。

平和・ドラ2の【1ソウ】【4ソウ】待ち。
リーチすれば12,000点になり、試合を決めるアガリとなるが、【1ソウ】が3枚場に出ており菅原の現物になっているため、【3ソウ】を切ってダマテンを選択。

次巡、園田が引いたのは無筋の【8ソウ】

気配を消したことで現物の【1ソウ】が打たれることを期待していたが、無筋の【8ソウ】を切ってしまうと期待できなくなるだろう。

勝負手のテンパイが入っているものの、トップ目なこともあり園田はこの局面でオリも考えていたという。

ただ既に【9ソウ】を切っていることから【8ソウ】を使い切っての復活も難しく、試合を決める打点が伴っていることから、園田は【8ソウ】のツモ切りリーチを選択する。

園田の打点は12,000点、菅原は5,200点以上が確定している。
直後、瀬戸熊が引いたのは2人に通っていない【3マン】だった。

この【3マン】は考えれば考えるほど厳しい牌だ。

菅原に通っている筋の本数は10本で、リャンメン待ちだと仮定すると8分の1で放銃する牌。

園田に通っている筋は8本だが、園田の河に【7マン】【2マン】と並んでいわゆる間4軒になっており、マンズ待ちだった場合は【3マン】【6マン】が本線に見える。

瀬戸熊の手には2人の共通安牌がないが、しいて言えば菅原に通っていて園田の中筋になっている【6ソウ】がある。

時間をかけて考えれば考えるほど、オリが頭をよぎりそうだ。

しかし瀬戸熊は【3マン】を豪快に叩きつけた。

これには実況席も感嘆の声を上げる。
自身は3,900点のカンチャン待ちなので、少しでも弱気になれば切れる牌ではない。

決着はすぐに訪れた。

園田が【8ピン】を掴んで瀬戸熊に放銃。

当然瀬戸熊がオリていたら生まれていなかったアガリで、このアガリがなければトップ目の園田の追加点、もしくは3着の菅原にリードを広げられていたかもしれない。

この【3マン】プッシュに痺れたという声がSNS上で非常に多く、この局面の思考をぜひ聞いてみたいと思った。

そして冒頭のLINEに繋がる。

もちろん完全安牌が無いという要素はあるとして、園田のリーチが現物待ちと読んだとすると、【3マン】は菅原だけに勝負する牌になり、押しやすくなったのではないかと考えていた。

数分後、瀬戸熊から返信があった。

同じ選択になったと思います。
もともとあそこの局は、きっかけ作りに行きました。
アガりが何よりその後の展開を変えると思ってましたので、だいぶ押すつもりでした。
ツモ切りリーチから、菅原さんの現物の可能性あるなとは思いましたが、点数的には行かなくてもいい所なので、確信があったわけではなかったので、そこまで読み切れてはいなかったです。
こちらこそ、質問して頂きありがとうございます。
記事楽しみにしてます。
0:46

対局裏インタビューや他選手の検討配信を見てから質問したため、送信したのは0時40分と深夜になってしまっているが、それでも数分でこれだけ丁寧な返信をしてくれる。本当にありがとうございます。

瀬戸熊の言葉をそのまま借りると、あの局は「きっかけを作る局」だったとのこと。

瀬戸熊はトッププロの中でも自分や相手の状態、いわゆる流れを意識して戦っている選手だ。ここで出ているきっかけとは、それまで続いていた悪い流れを変えるきっかけという意味だろう。

麻雀に流れはあるのか__
麻雀について様々なデータを見ることができるようになった昨今、昔に比べて否定的な意見をもつ人が増えているのかもしれない。

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