イーシャンテン。広い形にはなっている。
ドラのポンで、周りは来にくいはず、あとは、ツモるだけで――
ここでも、そんなグラディウスの夢を絶ち切ったのは、歌衣だった。
「メイカあああああ!! 」
ルイスの絶叫と共に。
この時、実質的に、グラディウスの敗退が、決まったのだった。
南3局
それでも、ルイスは最後までトップの道を諦めなかった。
ドラを3枚従えてのリーチ。
この待ちは、もう山には1枚しか残っていなかった。
それでも、その1枚を一発でつかみ取って見せた。
ルイス渾身の3000、6000。
これでトップへの道が拓ける。
公式配信のコメントも、ルイスを応援する言葉が飛び交う。
条件がどうとか、通過が厳しいとか、もちろんあるけれど、それは関係ない。
最後まで、諦めず戦う姿を見せるのが、ルイス・キャミ―だと、皆は知っているから。
南4局
歌衣が、リーチを打った。
トップを取る目的だけであれば、打たなくても良いリーチ。
しかし歌衣は自分らしさを貫いて、リーチと言った。
実際、選択肢としても悪くない。4着でもほぼファイナル進出の緑仙はそこまで親番にこだわる必要がなく。
ルイスも、ツモの親被りで緑仙を捲れて2着であれば、2人の結果次第で一応条件が残る為、おいそれとは攻めにくい。
歌衣のツモアガリで、セミファイナルは幕を閉じ。
ルイスは2位になったものの……この結果を受けて。
グラディウスはセミファイナルで姿を消すこととなった。
ファイナル通過は、チームヘラクレス、チームアトラス、チームゼウスとなった。
3チームが、レギュラー1位通過のチームアキレスと優勝をかけて、9/10(月)のファイナルステージでぶつかり合うこととなる。
「メイカ……! メイカのばk……お、お見事なのじゃ‥…?」
インタビューでは、抑えきれない呪詛を、ルイスがなんとか噛み殺している姿が印象的だった。
試合中はバチバチとやりあっていても、試合が終わればノーサイド。
歌衣とルイスのやりとりは、チームメイトとして共に戦い、お互いを認め合っているからこそ。
そしてルイスは、控室に戻って……チームの敗退を知った。
それでも、そこに悲壮な空気は無かった。
もちろん、結果は悔しがりながらも、最後まで、チームグラディウスは明るかった。
最後に、チームを引っ張って来た、因幡はねるが、1年を振り返り、まとめる。
「ルイスと勝が光属性なんでね……私も、そんな2人にあてられてね?」
「今日みたいな結果でも、全然怒らず、にこやかに笑顔に……」
「なれるわけないだろがあ!! 全員〇ね~!! 」
どうやら残念ながら最後まで、因幡はねるは闇属性から抜け出せず。そしてグラディウスの呪いは届かなかったようだが。
最後まで必死に、挑み続けた3人の勇姿は、皆が見ていたから。
どんなに苦しい中でも最後まで明るく、楽しく(時に呪いを吐きながら)過ごした、そんな1年をファンはきっと忘れない。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924