むこうぶち入門
打ち子物語
高レート博打場の人員構成は
①胴元。
②胴元の手先の打ち子。
③フリーの雀ゴロ。
④旦那衆。
このうち③フリーの雀ゴロ、というのが、昔の賭場用語のいわゆるむこうぶちです。
卓越した腕があって、高いレートに潜り込むことができれば、「博打は出世の早道だ」が実現できます。
ただし(ここ重要)、自分ではむこうぶちだと思っていても、実は周りからは旦那と見られていることも多いのだ。
ここでは、今もたくさんいる現在のフリー雀荘の打ち子を中心に紹介します。
打ち子の報酬は、時給制もあれば打った回数に応じての支払いもある。
いろんな契約方式があるものの、基本的には
「とにかく勝たないとダメ」
「それも、3割近いトップで」「チップも超重要」
といったところ。
レートは基本的に高いほうが勝つチャンスは大きい。
点5などの低レートでは、いわゆる「ゲーム代負け」になる可能性が高い。
●麻雀の場合、高レートのほうが相対的にゲーム代の比率が低くなるからです。
●余談ですが、その点パチンコは、ギャンブル性が高い(高レート)の機種ほど、客がわが不利で、
●カジノや公営ギャンブルは、あまり関係がない。
麻雀が食えるギャンブルであるポイントはここ。
「打ち子では生活できないので、やめます」
という申し出が、ぼくが経営する店でも起こる。
これはある意味当然で、
「麻雀を打つだけで生活できる仕事」
というのは、よほど腕が良くない限り存在しないということです。
なので、ほとんどの打ち子は、
●麻雀で遊ぶ費用を安く抑えたい。
●収入は別にあるけど趣味で。
●プロだけど、本戦の調整を兼ねて。
などがやっている理由です。
なるほどと思ったのは、次の具体的なケース。
「ガードマンのバイトが終わってから、好きなフリー雀荘に行くと、合計の時間が長くなる。
それなら、最初から雀荘にいたほうが、トータルでの時間や収入は得」
なるほど、人のことは言えませんが、どっぷりと麻雀生活ですね。
ぼくが見たところ、お金が続かずにやめるケースは全体の20%くらい。
長続きする打ち子は、いくらかの実益と趣味を兼ねた活動だと割り切っているようです。
むこうぶち成功率は
100人に1人
フリー雀荘の打ち子の元祖のような元麻雀プロに、Tさんという方がいます。
日本プロ麻雀連盟の小島武夫プロよりも少し年上で、レッスンプロ第一号とも言われた人物です。
ぼくも何回か対戦してもらったことがありますが、素晴らしく強い打ち手だと感じました。
ただし、すでに20年ほど前に現役を退いて、現在では浅草でホームレスをしているんです。
一時は大きい博打場で、むこうぶちを張っていたこともありますが、ぼくが知りあったころは、ごく普通のピン雀の打ち子でした。
Tさんは、流れ論の勝負師なので、他のお客さんの都合で勝負を中断されるもの、ハンディになってたかもしれません。
Tさんの腕なら、極端な低レートで無い限り、トータルで負けるようなことはない。
ところがですね、(ここ重要)特定のギャンブルに自信のある人に限って、他のギャンブルにも手を出して、大きく負けてしまう傾向が強い。
Tさんの場合は競馬。
競馬の負けや病気などの不運も重なって、心ならずもホームレスになってしまったんです。
Tさんは、かつて麻雀専門誌で戦術論を書いてたこともあるし、単行本の評価も高いので、いつか復活することを期待しています。
一方、ぼくが経営する雀荘に、数年前から月イチでゲストに来てもらっているのが、Mプロです。
「Mプロに挑戦したい」
打ち子は匿名で打つのが基本ですが、Mプロはゲストなので、名札を付けて打ってもらっている。
Mプロには、成績を正確に記録したブログを書いてもらってますが、これまで合計700回打って、トップ率31%、ラス率18%と圧倒的な強さ。
レートがソフトピンなので、勝ち分はそんなに多くありませんが、これがもしデカピンくらいだったら、まさに出世の早道なのだ。
Mプロは、GⅠタイトルの他にも日本オープンや最高位戦クラシックでも優勝するという最近の活躍ぶりで、ゲストの依頼が増えている。
「好きな麻雀で認められて仕事が増えるのは嬉しいです。でも、低レートのゲストが増えたので、実質の実入りのほうはちょっと…」