空星きらめは昨年のMVPだ。
役満大三元までアガリ、圧倒的なスコアでデビュー年を華々しく飾った空星きらめ。
チームも見事優勝し、空星が順風満帆のシーズンを過ごしたように見えた人は、多いのではないだろうか。
しかし実は、1つだけ、空星には心残りがあった。
実はこれは今シーズン初めに空星の観戦記を書いた時にも触れたのだが……昨年の最終戦。
つまりファイナルの第3試合に出場した空星は……対局後に一人、無力感に打ちひしがれていた。
優勝して、嬉しいはずなのに。
圧倒的強者3人を前にして、自分の麻雀を何もさせてもらえなかった無力感。
もやもやとした気持ちが、空星の胸に巣くった。
そして今年、最初の登板でこそトップを飾ったものの、その後は苦しいシーズンが続いた。
思うように結果が出ない。
思うように、アガれない。
麻雀は、どんな強者であっても常に勝てるゲームではない。
空星に訪れた試練。成長し、強くなった空星にとって、それは過酷なものだった。
去年よりも確実に強くなっているはずなのに、結果は去年の方が圧倒的に良い。
そんなもどかしい気持ちを抱えたまま、気付けばシーズンは最終盤。
チーム状況は苦しい。優勝のためには、今日少なくとも2トップは必要だ。
そして自分が4着になってしまったら、もうその時点で優勝確率はほとんど無くなると言っても過言ではない。
そして負けられないのは、全員が同じ。
全ての選手の思惑がぶつかり合う、ファイナルが始まった。
ファイナル 第1試合
東家 風見くく (チームアトラス)
南家 空星きらめ(チームゼウス)
西家 龍惺ろたん(チームヘラクレス)
北家 える (チームアキレス)
試合開始前に、ファイナルのシステムについて簡単に触れておきたい。
セミファイナル同様、第2、3試合に出場する選手は、それまでの試合結果を知らずに行う。
そして今年からファイナルに追加されたのが、新決勝方式。
各チームから1人ずつ選手を選び、最終第4試合を行う。
その第4試合は、合計スコア1位のチームがアガった瞬間に決着。他チームはそれまでに1位のスコアを上回る必要がある、といった形だ。
それでは試合の方へ、入っていこう。
東1局
負けて良い選手などいない前提ではあるが。
状況や相手等関係なく、誰に一番勝って欲しいか、と問われたら多くの人がこの「風見くく」の名を挙げるのではないだろうか。
昨年から神域リーグに参加し、未だトップ無し。
風見の努力が報われて欲しいと思うのは、当然の気持ちである。
そんな風見の親番であったが、早々にえるからのリーチを受けてしまう。
カンが埋まって形が良くなったが、いらないは無スジの危ない牌だ。
という比較的通りやすい牌を切って迂回していると、を引いてイーシャンテン。
しかしは依然として通りやすい牌にはなっていない。
「ごめんなさい!」
それでも、風見はを押した。
空星同様、風見も、4着を引いてしまったら優勝の可能性が途絶えることを理解している。
だからこそ、押すのは怖い。それでも、押さなければ活路は開かれない。
を引いて、カンのテンパイを果たした。
リーチに行く手もあるが
ここはを切ってダマテンに構えた。を切ればイーペーコーがつくが、の方が比較的通しやすい。
更には前巡に通っており、ダマにしておけばリーチ者以外の2人からも出やすくなっている。