渋谷ABEMASを覆う叢雲 挑むは #松本吉弘 打ち破る弾丸放て【Mリーグ2024-25観戦記 10/28 第1試合】担当記者 #後藤哲冶

【中】を鳴いていた松本が【9マン】を引いて手が進んでしまう。
【北】すらも通っていない以上、真っすぐアガリに向かう。
そうすると押し出されるのは……当たり牌の【7マン】だ。

裏ドラ1枚が松本に重くのしかかる。
7700の3本場、8600の失点。
これでトップ争いからは後退させられてしまう。

それだけではない。
4着目に沈んでいた逆襲のヘラクレス、浅井堂岐が親番で火を噴いた。
南1局に4000オール、続く1本場では松本のリーチに追っかけての6000オール。
今年からMリーガーになった同団体の好敵手が、松本に容赦なく襲い掛かる。

これで一気に、堂岐がトップへと踊り出た。

苦しい。
あまりにも展開が苦しい。
いつの間にか、自身の持ち点は1万を切った。

南1局2本場

そんな松本に選択が訪れる。
【8ソウ】を引いてリャンメンになったが、そうすると出ていくのはドラの【5ソウ】だ。
打点を考えても、できればドラは使いたい。ここは一旦の【9ピン】切りか。

松本はもっと強い選択をした。【8ソウ】のツモ切り。
ドラは絶対に使う。その上で、ドラ重なりをした時のピンズリャンメンすらも手放さない。

必ず浮上する。強い意志の籠った打牌だった。

その意志に、牌が応える。
持ってきた牌をカメラが認識するよりも早く。松本の低いリーチ発声が響いた。

引いたのは――絶好のカン【6ソウ】……!

祈るように、牌山に手を伸ばす。
4着目のリーチということもあって、全員がオリた。
流局では許されない。
残りツモ番は、あと1回――

最後のツモ番に、3mが眠っていた……!
裏を1枚乗せて3000、6000。
息を吹き返す。これでまだ、トップさえ見える位置に戻って来た。

南2局1本場

元々イーシャンテンであったところに、【9マン】を引いて来て松本の手が止まる。
ピンズは触れない。マンズからの選択。

松本が選んだのは【2マン】だった。
【1マン】は2枚切れだが、こうしておけば実質のロスは【2マン】の2枚だけ。【5マン】一気通貫完成で嬉しいテンパイになる。

そして次巡、掴んだのはドラの【9ソウ】
手には全くいらない牌で、【7ソウ】【8ソウ】を切っているからこそ、使いようがない。
下家に座る浅見が、オタ風の北を切っていて不穏な仕掛けだ。
一旦【1マン】を切るという選択肢もあるが、【1マン】を切ったことでロスになる牌が多すぎる。マンズだけではない。【3ピン】【5ピン】【6ピン】も全てロスになる。
それは到底受け入れられない。切るより、ない。

「ロン」

そう言われた瞬間に、明確に松本の表情が歪んだ。

これだけやってもなお、まだこの暗闇を抜けるには至らない。

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