渋谷ABEMASを覆う叢雲
挑むは松本吉弘
打ち破る弾丸放て
文・後藤哲冶【月曜担当ライター】2024年10月28日
渋谷ABEMASの現状が厳しいということは、もう多くのMリーグファンの方は知っているかもしれない。

これが今日を迎えてのチームポイント。
全体の試合数を考えればまだ4分の1程度。いくらでも巻き返しがきく、とはいえ、300を超える負債は、優勝を狙うとすると少し苦しい。

全体的に苦しむチームの中、特に厳しい戦いを強いられているのが、松本だった。
今シーズン、ここまで7戦を打って、トップ無し、4着が4回。
安定感抜群の松本が、ここまで継続して苦しんでいる姿を見るのは、初めてではないだろうか。

結果的に4着となった半荘も、凄まじいアガリを見せてくれた。
しかしそれでも、着順アップにはあと僅か一歩……いや半歩足りなかった。

今日こそは、チームの、そして自分の苦しい現状を打破するべく。
松本が対局室へと足を踏み入れた。
10月28日 第1試合

東家 浅井堂岐 (セガサミーフェニックス)
南家 萩原聖人 (TEAM 雷電)
西家 松本吉弘 (渋谷ABEMAS)
北家 浅見真紀 (赤坂ドリブンズ)
東1局

開局早々、松本の一打が面白い。
5巡目、を引き入れたところで松本が少考。
シンプルなのは切りだろうか。
の部分を固定して、カン
を引いたらリーチ、
に好形変化を求める形になる。

松本の選択は打。
が合わせて4枚見えていることが大きい。
を決めづらく、かといって、
を切って形を固定するほどの手ではない。
であれば、ドラを順子手で使えるようにを1枚ほぐし、ここにターツを求めた。
が雀頭になっても、
引きで雀頭になっても良い。

落ち着いている。
これまでの対局と変わらず、冷静に盤面を見つめる松本の姿がそこにはあった。

この局は萩原の手がスムーズに伸びる。
赤赤
と引き入れてドラを4枚従えた勝負手。
を切れば三色に固定できたが、ここは
を切って
待ちのリーチへ。

ここに追い付いたのが親番堂岐だった。
カンを引き入れたら当然勝負の一手。
現物待ちであることからダマテンも選択肢にはあるが、出アガリの5800はこの手ではやはり少し物足りない。
リーチへ打って出る。
しかし待ちのがなんとこの時既に山に無い……。

ここは堂岐がを掴んで萩原への放銃で決着。
12000の大物手が開幕から飛び出した。
この後、流局を3回挟んで、東4局は3本場。

松本にと自風の
が対子のアガリやすい配牌が入った。
流局3回で積み重なったリーチ棒の供託はなんと4本。アガるだけで4900点がついてくるこの場面での役牌2つは非常に嬉しい。

しかし先制テンパイは親の浅見だった。
を引き入れてペン
テンパイを、即リーチへ。
外す選択肢もあるが、ここは真っすぐにリーチ。あらかじめ決めていたのかスムーズに発声していたのが素晴らしい。