南3局
最後の親番。
手は入っている。赤もあってタンヤオでまとまりそう。
あとは、リーチと言えさえすれば。
赤を切って、受け入れを最大に。
次巡萩原からが切られるも、当然スルー。
これを4000オールにできれば、まだ――
その願いは、あまりにもあっさりと絶たれ。
渋谷ABEMASを覆う叢雲は今宵、晴れることは叶わなかった。
見事にオーラス、満貫ツモで逆転し、今季初トップを取った萩原のインタビューが印象的だった。
萩原も、厳しい状況が続く中でのトップ。だというのに、今季苦しむ松本を慮る言葉が多く溢れていた。
麻雀を愛する同士だからこそ、その苦しみもまた、理解できる。
思えば『終盤に強い松本』という印象をより強く視聴者に伝えたのは、昨年、プレイヤー解説として松本の登板試合を解説していた萩原ではなかっただろうか。
松本の強さを知っているからこそ、そして何よりも、松本吉弘を好ましく思っているからこそ。
少しでもエールを送りたいという熱い気持ちがこみ上げたのかもしれない。
「まだ序盤」そう言えるタイムリミットは、眼前に迫りつつある。
同時に、このどこまでも続きそうな悪夢を最初に振り払うのは、やはり松本なのではないかという淡い期待もあって。
萩原のインタビューの際には、深く項垂れる姿が見えた。
展開の厳しさと、自身のスコアが大きくマイナスしていることも相まって、今日松本を襲ったダメージは、並大抵のものではないだろう。
しかし、チームメイトは、ファンは、信じている。
必ずこの逆境を跳ね除け、最高の笑顔を見せてくれることを。
打ち破れ、松本吉弘。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924