Mリーグ2018
ベストオブ【近藤誠一】
21人のMリーガー名場面集
文・危険な鬼太郎
大きく打ち、大きく勝つ
近藤の麻雀は少しばかしおかしな麻雀だ。リーチがかかっても安全牌を先に打たずに危険牌から先に打ったり、のこり3順でも自分のアガリを信じてケーテンを取らなかったり…。
不思議な麻雀。といった陳腐な表現しか思いつかない。こうした麻雀は近藤と同じ団体の故飯田正人プロの印象が強いと思う。
この飯田だが、三色を見ずに手牌を進行させたり、場の状況だけではなく、自分の感覚を用いて手牌を進行させることが多い打ち手だった。
近藤に似ている打ち手…。というよりも近藤が寄せた打ち手だ。
そんな近藤の摩訶不思議な麻雀を振り返ってみたい。
東1局 近藤が聴牌。
もう場の状況も何もない。赤赤なのでカンでリーチする打ち手も数多いるだろうが、近藤はここから打。
ピンズのリャンメンやマンズのリャンメン変化、またはとのシャンポンにしてマンガン以上のアガリをしようとしている。もちろんだが、の1枚目は鳴かない。
狙い通りのシャンポン変化。これでをツモって裏が1枚乗れば跳満まで見えるし、が裏ドラだと倍満まで見える可能性がある。
を園田からとらえてのマンガン。愚形リーチは打たず、ゆったりと打っている。
しかし、次局は驚いた。
まずは園田の先制リーチ。
これに大物手で追いつく近藤!
タンヤオ三暗刻赤1の聴牌。安めのでも6400だし、それ以上の変化も見えるため、当然のヤミテン。
近藤の手が変化。
四暗刻に手が化けた。手としてはを切るかを切るかの二択。とりあえずを切って待ちに受けて、理想的な四暗刻単騎の牌を求めるか、もう待ちでリーチもあるような手に見えた。
ここは打。確定四暗刻単騎に受ける。近藤は八千点なんて微塵も欲しくはない。ほしいのは32000点。役満だけだ。
大きく打つ。勝つために。
次局、を引いての選択。正直、もも危険度はさほど変わらない。なら、リーチ者の園田もタンピン系の捨て牌なので、カリテンの単騎に受ける一手だ。
「リーチ!」
近藤にとってこのはカリテンではなかった。でもこれリーチは流石に大きく打ちすぎのように見える。
のターツを外し、ワンチャンスやノーチャンスを狙って他家の対子落としなどを狙う。
惜しくも園田に放銃となってしなったものの、他に類を見ない、素晴らしいリーチに思えた。
もう一局、大きく打って勝つ近藤の局を紹介したい。
オーラス 近藤の親。ラス目からの着順アップを狙う。
近藤がをポン!
遠い仕掛けだが、メンゼンでやったところでさほど速度は変わらないし、打点は安くなる。
速度は遅いが清一色という打点でカバーしている。
もポンしてもう清一色まっしぐら。
これに追いつくのが2着目の瀬戸熊。
でアガれれば跳満だ。
瀬戸熊の現物のをチーして近藤も聴牌!
もう降りはない。純然たる殴り合いの勝負だ!
ドラのを持ってきて、怒髪天を抜く。思わず天を見上げる近藤。
瀬戸熊が跳満を狙っているのだとすれば、ドラと何かのシャンポンの可能性が高く、これはSクラスの危険牌だ。
状況的には切るしかない。しかし、近藤の感性が切るなと囁く。