「I’m OK!」〜多井隆晴、危険水深からの生還【Mリーグ2024-25観戦記 11/1 第2試合】担当記者 千嶋辰治

この【9マン】を切り出す際に、【9ソウ】を先に切るかどうか考えたようだ。
事実、

滝沢にわずかではあったが、珍しく逡巡しているような間があった。

タラレバの話で恐縮だが、滝沢の言うとおりにこのタイミングで【9ソウ】のトイツ落としに着手していると、

多井から三色含みの勝負リーチが飛んできても、

という、受け駒がいくつかある手格好になっていた。
それからの滝沢のツモが強烈で、

 

 

 

【6マン】【6マン】【2マン】【7マン】と引いて、

違う世界線ではこのテンパイ。

この【2ピン】ツモで6,000オールか、リーチとしていると裏ドラ1枚で8,000オールの仕上がりになっていた。

迷った局面が裏目に出た滝沢、思わず表情が歪む。

多井よりもアガりが先にあった滝沢が仕留められなかった世界。
その世界で躍動するのは、

多井だ。

いつもよりも感情が乗った「リーチ」の声。
おそらく、同卓している全ての選手には、普段のそれとは違う多井の迫力が伝わっていただろう。

その感情とは、
「頼む、アガらせてくれ!」という懇願の情なのか、
「チームメイトを鼓舞するために背中を見せたい」という思いか、はたまた
「もらった!」という確信めいたものだったか。

多井の一声が波紋のように対局場に広がり、誰も前に出られないまま。
そして、その時がやってくる。

「ツモ。」

最高目の【4ソウ】を静かに手繰った多井。
そして、祈るように裏ドラに手を伸ばす。

そこにいたのは【1マン】
裏ドラを1枚乗せて、4,000-8,000のツモアガり。
この一発でゲームをひっくり返し、トップ目へ突き抜けた。

「まだまだ先が長いので… でも嬉しいです。」

対局後のインタビューで、そう切り出した多井。
そして、倍満ツモの場面を振り返ると、

「今シーズン初めて裏ドラが乗ったんです。ファンの皆さんに『僕に裏ドラが乗るように祈ってね』って言っていたので… みんなのおかげです。ラッキーでした。」

ようやく笑顔がこぼれた多井。
しかし、インタビューの冒頭に語ったとおり、先は長い。

本日をもって各チームがレギュラーシーズン96試合の4分の1を消化した。
レギュラーシーズン通過ボーダーはTEAM雷電の▲23.9。
まずはここを巡る戦いに注目が集まるが、ABEMASはカットラインまで300以上の距離がある。
風林火山やBEASTにしても、200以上のマイナスを克服しなくてはならず、あるいはこのまま上位のチームに押し込まれてしまう可能性もゼロではない。

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