このを切り出す際に、を先に切るかどうか考えたようだ。
事実、
滝沢にわずかではあったが、珍しく逡巡しているような間があった。
タラレバの話で恐縮だが、滝沢の言うとおりにこのタイミングでのトイツ落としに着手していると、
多井から三色含みの勝負リーチが飛んできても、
という、受け駒がいくつかある手格好になっていた。
それからの滝沢のツモが強烈で、
、、、と引いて、
違う世界線ではこのテンパイ。
このツモで6,000オールか、リーチとしていると裏ドラ1枚で8,000オールの仕上がりになっていた。
迷った局面が裏目に出た滝沢、思わず表情が歪む。
多井よりもアガりが先にあった滝沢が仕留められなかった世界。
その世界で躍動するのは、
多井だ。
いつもよりも感情が乗った「リーチ」の声。
おそらく、同卓している全ての選手には、普段のそれとは違う多井の迫力が伝わっていただろう。
その感情とは、
「頼む、アガらせてくれ!」という懇願の情なのか、
「チームメイトを鼓舞するために背中を見せたい」という思いか、はたまた
「もらった!」という確信めいたものだったか。
多井の一声が波紋のように対局場に広がり、誰も前に出られないまま。
そして、その時がやってくる。
「ツモ。」
最高目のを静かに手繰った多井。
そして、祈るように裏ドラに手を伸ばす。
そこにいたのは。
裏ドラを1枚乗せて、4,000-8,000のツモアガり。
この一発でゲームをひっくり返し、トップ目へ突き抜けた。
「まだまだ先が長いので… でも嬉しいです。」
対局後のインタビューで、そう切り出した多井。
そして、倍満ツモの場面を振り返ると、
「今シーズン初めて裏ドラが乗ったんです。ファンの皆さんに『僕に裏ドラが乗るように祈ってね』って言っていたので… みんなのおかげです。ラッキーでした。」
ようやく笑顔がこぼれた多井。
しかし、インタビューの冒頭に語ったとおり、先は長い。
本日をもって各チームがレギュラーシーズン96試合の4分の1を消化した。
レギュラーシーズン通過ボーダーはTEAM雷電の▲23.9。
まずはここを巡る戦いに注目が集まるが、ABEMASはカットラインまで300以上の距離がある。
風林火山やBEASTにしても、200以上のマイナスを克服しなくてはならず、あるいはこのまま上位のチームに押し込まれてしまう可能性もゼロではない。