どれだけ足掻いても
掴めない初トップ…
それでもがむしゃらに
前を向く萩原聖人の姿勢
文・山﨑和也【月曜担当ライター】2020年11月30日
Mリーグも30試合が経過した。筆者はこのくらいの時期から推しの選手が徐々に増えてくる。なかなか勝てなくて苦しんでいる選手を応援したくなってしまうのである。去年、筆者は和久津晶の初トップを見届けて大粒の涙を流してしまった。こうしてあの人もこの人もと応援していくうちに全員のことが好きになっていく。Mリーグ観戦あるあるだと思う。
今年はあの男が信じられないレベルの不運に見舞われている。
Mリーグを、いや日本を代表するスター萩原聖人だ。ここまで9戦戦ってトップなし、2着2回、3着2回、ラス5回という地獄の状態なのだ。チームも苦しくなってきているこの状況で送り出されたのはチームメイトから信頼されている証拠である。絶対にトップが欲しい。今回の入場も気合が入っていた。他の3選手には申し訳ないが、この日は萩原を応援する気持ちで観戦に臨んだ。今回の2戦目は贔屓目な記事になってしまったことをお許しください。
2回戦
東家 魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
南家 藤崎智(KONAMI麻雀格闘倶楽部)
東1局の配牌から力が入る。さあにドラのも1枚。今日の萩原ならここからでも疾風迅雷(しっぷうじんらい)の如くアガれるはずだ。
ちょっと筆者の記憶が飛んでしまったようで東3局から取り上げる。上の画像を見てほしい。この萩原の勇ましい表情は東1局とほとんど変わっていないではないか。東1局は?と思う読者もいるかもしれないが、東3局から見ていただきたい。
配牌はドラのが重なってなかなかのまとまり具合である。第1打は。いきなりカンを嫌っていった。
上図からはを落としていく。萩原の目指すはメンタンピンドラドラだ。を残しておくのがポイントで、を引いた時に生きてくる。
うれしい引き。を落としきって形になってきた。
何やら点数を多く持っている親の滝沢の手はこちら。赤を2枚抱えており、を引けば一気に化ける手格好だ。1戦目は激しい空中戦を制してトップに立っている。このパワーを分けてほしいものである。
イーシャンテンとなった萩原だが、まだこの手では満足できない。仮にが埋まってしまうと、とのシャンポン待ちかペンに待ちになってしまう。
を引いた。これでと入れ替えることに成功。ついに端の牌をすべて落としきってタンヤオが見えた。
うんうんと軽くうなずく萩原。いいぞいいぞと心の声が聞こえるようではないか。
しかも次のツモはドラの。ドラ暗刻になっての打で、の両面待ちが残ってテンパイとなった。これはエクセレント。当然リー……
チはかけない。ダマでも満貫ある手なので闇に潜む。狙うはあの男だ。
開局から満貫連発でトップに立っている滝沢である。当たり牌のを手にしたがここは2枚切れのを落として回避。
しかし絶好のペンが埋まり、ノータイムでが打ち出された。序盤からペンチャンを残す判断は見事だったが、今回は相手が悪かったといえよう。
素早く手牌を倒して「8000」とひと言。トップに向けて大きな満貫直撃である。これは筆者の推測だが、もしリーチをしていたらアガれなかったのではないかと思う。原稿執筆中の現在、このあとの展開を見てしまうとどうも……。
筆者の推測はともかくこれで2着に浮上した。今日の萩原は違う。そう思ったのは筆者だけではなかったはずだ。前を向こう。
南2局。ここで萩原にとって大事件が発生する。
親は東3局時点で何やらハンデを背負わされていた藤崎。ひとり1万点台に沈んでいる。しかし配牌はかなりのまとまりよう。ドラを対子で持っている。