鈴木優。衝撃のバレットは、見るものの心までをも撃ち抜く【Mリーグ2024-25セミファイナル観戦記 4/17 第1試合】担当記者 渡邉浩史郎

そしてこれも和了り切る。全部押しているだけと思う人もいるかもしれないが……

次局、茅森のリーチにドラの【南】でノータイム降りを選択。
もちろんドラだからやめた、というのは理由のひとつでしかない。恐らくだが、ほかにも単騎に優秀な牌を引かされていたらやめていただろう。

茅森の河は【2マン】【5マン】【3マン】と切られているのに【4マン】を切ってのリーチだ。
これは優の仕掛けへのケアで残されていた牌っぽくも見えるだろう。では手牌の他の形はどうなっているだろうか。
優の目からは【5ピン】【9マン】【3ソウ】【9ソウ】といった。茅森の手牌に使われていそうな牌がことごとく3~4枚見えてしまっている。
こういったケースではやはり茅森の手が普通のメンツ手を構成しにくく、対子手や暗刻手が出てくることが予想できよう。【4マン】を暗刻から切っているケースを含めても、やはり七対子が本線に見えるのではないだろうか。

日向から追っかけリーチを受けての優の【5ピン】切りが、その読みを物語っていると言えよう。
安全度だけで言えばほとんど【3ピン】【6ピン】にしか当たらないように見えるうえに【5ピン】のワンチャンスの【6ピン】切りも選択肢にあったが、優はさほど悩まずに日向の現物の【5ピン】を切った。
これは【5ピン】が茅森に対して安全と分かっていなければ選べないだろう。

日向が【南】を掴んでの決着で、ここも優は無傷で生還を果たす。

さらに【南3局】でも優の守備的な一打が光る。先制リーチの日向に対して……

優の手牌がこちら。筋の【2マン】でもいいし、切り順でかなり当たりにくそうな【7ソウ】切りでも良さそうだが……

手役絡みの愚形やシャンポンも考慮して、現物の【赤5マン】を切っていく。今までの押しも決して雑ではないことが伺える繊細な一打だ。

しかし聴牌になるとその表情は一変。”優”の名前からは考えられぬ、リーチで畳みかける鬼神が登場し……

全てをかっさらう!

これでトップに立つと同時にオーラス、そして再び鬼神が目覚める。

11巡目、寿人が切った【1マン】にチーの声をかける。一気通貫片アガリの【4マン】【7マン】待ち。
【5マン】が良く見えていて【4マン】で和了れそう+和了れない【7マン】はドラだからそもそも出てきにくいのWコンボで聴牌を入れる。

一方こちらはラス親でチーム的にも後のない日向。
聴牌を入れなければ終わってしまうゲーム。受け入れ最大なら【6ピン】切りで【1ソウ】の役なしですら逃したくない状況ではある。強気に【6ピン】を切る手もあったか、この選択が意外な勝負の綾を生む。

優の元に舞い降りた【2ソウ】。本来ならツモ切ることで後の【5ソウ】引きでのスライドに対応したいところである。
しかし日向の最終手出しが【3ソウ】。今【2ソウ】で放銃の可能性もあるとみて現物の【3ソウ】を合わせ打つ。
日向がポンテンを取れなかったことで……

寿人が【9ピン】を引き入れて、逆転のリーチを打つ!
さらに実はだが、日向が【2ソウ】のポンテンを入れられているとこの寿人のもとに当たり牌の【4ピン】がやってくる。条件の手が入っているチーム的にも追う側の寿人ならツモ切って日向の和了りとなっていただろう。
数奇な運命はこれだけで止まらない。


優の元にはまさしく懸念していた裏目。スライドできない上に赤い【5ソウ】がやってきた。
寿人に打ったらトップ陥落は確定だが……

逆に言えば失うのは1着順だけ。3着まで落ちることはほとんどないと見て、現物待ちの聴牌をキープ!

これだけ強気の押しながら一つの強打もなく、最後は名前通り優しく【4マン】をツモってのトップ確定となった!

終わってみればあのいつものぽわぽわとした優し気な鈴木優
セミファイナルでもこの男を止めることはできないのか。

これでなんとドリブンズの牙城を突き崩し、パイレーツが1位に浮上。
そして優の航海は二戦目に突入した。

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