◇はじめに
これは麻雀最強位を目指す妻とそれを応援する夫、2人の麻雀プロによる愛に満ちた麻雀戦術記録である。
先日行われた最強戦2021女流プロ最強新世代予選会で見事勝ち上がった妻・駒田真子(こまだまこ)。日本プロ麻雀連盟の先輩であり、以前に最強戦全日本プロ大会へと進出した経験もある夫・東谷達矢。
来る8月22日の決戦に向け行っていた夏の麻雀強化講座もいよいよ佳境に!
まこ「鳴いてアガれるトイトイかなあ。でも麻雀上手い人はチートイツが上手なイメージがある」
東谷「チートイツの方がハードル高いように思われがちだけど決してそんなことはないよ。一つ検証してみようか。麻雀牌を全て裏向きにしてランダムに30枚取り出してみよう」
まこ「30枚……? わかった、やってみる」
まこ「何で30枚なのかわかった。配牌13枚にツモ牌17枚で合わせて30枚だからだ」
東谷「おっ。まこちゃん最近察しが良くなってきたね。その通りだ」
まこ「でもこれで何かわかるの?」
東谷「これだけではあまり何も見えないから何回か繰り返し試してみようか。それと同時にトイツが幾つあるかも数えてみよう」
——1時間後——-
東谷「おつかれさま。この表を見てどう思った?」
まこ「思ったより対子の数が多かった」
東谷「そうだね。多い時で9対子や10対子ということは、30枚中の3分の2は対子絡みということになる」
まこ「でもそれってたまたま多かっただけじゃないの?」
東谷「確かにそうだね。ただ、この12回の試行での平均は7対子。もっと試行回数増やしたとしてもこの値に近い値に収束する。ということは、山にいる牌を読む思考さえ身につければ、チートイツでアガる回数も自ずと増えていくよ」
まこ「チートイツは攻守兼用っていうし得意になったら凄い武器だよね。でも山にいる牌を読むってどう考えるんだろう」
東谷「基本的には数牌で考える。字牌は2枚切れでもない限り誰かが対子以上で持ってるか山に眠っているかわからないからね」
まこ「そうなんだ。チートイツに決め打った時は字牌を集めるものだと思ってた」
東谷「確かに字牌を抱えておくと、誰かからリーチを受けた時に受け駒として使いやすいし、テンパイ時の待ちとしても優秀。ただテンパイ前の時点で字牌の重なりを期待し過ぎるのもまたいけないんだ」
まこ「確かにさっきの実験でも字牌の対子が1種類または2種類がほとんどだった」
東谷「そもそも字牌は鳴きがなかった場合、手元に来る牌に6枚前後、王牌に平均3枚とあると言われている。だいたいの計算だけど、配牌に平均3枚、山から引くのが3~4枚。5巡に1枚しか引かないくらい少ない」
まこ「なるほど。確かにそう言われると少なく見えるね。でも重なりやすさに字牌も数牌も関係ないんじゃないかな?」
東谷「仰る通り。要は字牌を盲信せずにしっかりと数牌で重なりやすい牌を見つけようということだね。見つけられない時は字牌を抱えていいということになる」
まこ「具体的にはどうやって見つけるの?」
東谷「単純に残り枚数の多い牌、又は他家の捨て牌から考えて壁の外側にある牌を持つ。例えば親のAさんの捨て牌がこうだったとしよう」
ドラ
東谷「全てが手出しだったとしてどのようなことが言えるかな?」
まこ「が字牌より先に切られていることからを持っている可能性は高そう。あとは切りのタイミングからかのどちらかは持っているはず」
東谷「そうだね。あとはとの切り順から鳴きを必要としないほど整っている、又は重なりの価値が低いことからやドラのが暗刻になっている。逆には持っていない可能性が高そうだね」
まこ「なるほど」
東谷「マンズはまったくわからないから除外。ピンズは上はノーヒントで、は暗刻はあっても対子は可能性低い。そしてソーズはある程度予想がつく。が孤立牌ではないことからまこちゃんが言うようにか又は両方持っていることになる。そして直後の切り。を持っているとするなら、が不要になっていることからを持っている可能性が高い。で完成している可能性もあるが、それほどソーズを厚く持っているなら、初手切りが早すぎるので2は持っている可能性は低い」
まこ「ということは、からの外しも可能性低いってことか。からの引きでスライド、次巡を持ってきたか雀頭固定でよくなったから切りってこと?」
東谷「がの可能性もあるけどその通りだね。というわけでチートイツを狙う時にAさんだけの情報を元に考えると、持たれている可能性の低いや壁の外側のが望ましいということになる。ただ、実際には他の2人の情報も加味しなければいけない。例えばBさんが中盤以降に→のような切り順をしてきた場合、の待ちとしての評価が下がるから他のいい牌と入れ替えるといった具合にね」
まこ「聞いてる分には納得できるけど、実戦で時間を掛けて考えるわけにもいかないから大変そうだなあ」
東谷「どの辺りを持ってそうかという当たりをつけておくだけで視野はぐっと広くなると思う。鳴きやすい牌を持っている時はトイトイでもいいけど、そうでもない時は自力で作ることのできるチートイツが効果的だからぜひ積極的に狙ってみよう」
まこ「はい。ありがとう、先生」
東谷「ではここからは最強戦前ということでインタビューを行います」
まこ「インタビュー?」
東谷「まず対局への意気込みを聞かせてください」
まこ「放送対局で多くの人に見てもらう機会をいただけたから、一つでも多く勝ち上がりたいです」
東谷「最強戦という場に思い入れはありますか?」
まこ「高校生の時から読んでいた雑誌ということで感慨深いものがあります。まさかその対局に自分が出られるとは思っていなかったので、精一杯がんばりたいです」
東谷「視聴者の方にはどういった所を特に見てほしいですか?」
まこ「父親譲りの勝負強さを見てほしいです」
東谷「最後に何か伝えたいことがあればお願いします」
まこ「多くの方に麻雀を見てもらえるいい機会なので、1人でも多くの人の記憶に残るような麻雀を打てたらいいなと思っています。応援してもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします」
東谷「ありがとうございました。最強戦、がんばってください」
まこ「先生から教わったことを生かしてがんばってきます。ありがとう」
駒田真子最強位への道は続く!