「いつもの多井に戻っている」
そう私が最初に感じたのは、東2局のことだった。
多井の上家にいる小林が、

「しばし考えた後に」を切った際、
多井は、

この表情をしていた。
「大げさなくらいに、顔が動いているときの方が、多井は卓に入り込めている」そう私は思う。
ちなみに、これは特定少数の競技対局、しかもカメラがあっての挙動である。
雀荘で知らない人どうしと打つときは、一般的にあまり人の顔はガッツリ見ない方がいいように思う。
MリーグはMリーグの、各プロ団体にはプロ団体こ、そしてそれぞれの雀荘には雀荘の、それぞれのしきたりがある。
麻雀においても、「郷に入っては郷に従え」という諺が、当てはまるだろう。
話を戻して、この日の多井は打牌選択においても、大いに余裕が感じられた(ギャグではない)。
まずは、東3局1本場、

ダブをポンした多井は、このテンパイから、
待ちを、

カンにとった。

のツモアガリに期待しつつ、
と
合計6枚を持ってきたときに、678三色の可能性も残す一打だ。
選択にも、

表情にも、余裕が窺える。
これを、

黒沢からアガって、2900は3200の加点に成功。
東3局2本場は、

リーチを打った多井の一人テンパイ。
流局後、

手で顔をパタパタと仰ぐ多井。
多井熱が冷めやらぬまま、続く東3局3本場、

またもや多井はリーチを放つ。
より
を持ったのは、
が宣言牌となった場合に
–
や
–
待ちがボケるからだ。
安全牌などと持ち替えるまでの、わずかの巡目においての話ではあるが、「先手が取れているなら、相手の読みをずらしにいく」のは多井が得意とするところだ。
逢川から追っかけリーチが入るも、

を引きアガって、2600は2900オール。
さらに、多井は東3局4本場、

ここから、

打とする。
ドラの、そして
と
のシャンポン受け、これらが埋まったときの即リーチルートは残しながら、ピンズの伸びも見た一打だ。
次巡、

ピンズでリャンメンが出来て、

打。
親で先制が取れそうな状況だ。
その理由は、巡目の早さと、

他家の河の薄さ。ここは大きく狙いたいところである。
シャンポンを残した目先のアガリよりも、に焦点を合わせたピンフ形の手を見た一打だ。
これが、
